第108話:男2人
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10分早かったので、
都合クロノさんは5分の遅刻ということになる。
(さすがに連絡するか・・・?)
そう思い始めたころ、後ろから肩を軽く叩かれた。
「悪いな、ゲオルグ。少し遅れてしまったよ」
「いえ。そんなに待ってませんしね」
そう言いながら振り返ると、クロノさんが片手を上げて立っていた。
「そうか、なら行こうか」
クロノさんはあっさりとした口調でそう言うと、俺に背を向けて歩き始める。
俺は、クロノさんの背中を追いかけていく。
クロノさんは大通りをそれて、少し狭い路地を足早に歩いていく。
やがて、クロノさんの足はある店の前で止まる。
「ここですか?」
「ああ」
俺が尋ねると、クロノさんはゆっくりと頷く。
その店は、どこか古めかしい雰囲気を醸し出すバーだった。
クロノさんがドアに手をかけると、きしみ音を上げながら開く。
クロノさんに続いて中に入ると、うす暗い店内が俺達を出迎える。
俺達は店の奥の方にあるテーブルに腰を下ろした。
「いい感じの店じゃないですか」
「そうだろう? 僕も気に入っているんだ」
クロノさんは自慢げに笑ってそう言う。
俺達が席についてすぐ若い男性の店員が寄ってくる。
「いらっしゃい。今日はお連れさんがいらっしゃるんですね」
「ああ。ちょっと話があってね」
「そうなんですか。で、なんにします?」
「いつものを」
「わかりました。そちらは?」
「ビールを」
「銘柄はなんにされますか?」
「適当に見つくろってくれるかい?」
「わかりました」
店員は軽く頭を下げると、カウンターの奥へと下がっていく。
「食べ物は頼まなくてよかったのか?」
「クロノさんが何か頼んでるでしょ?」
「まあ、そうだが・・・。僕が何を頼んだのか判ってるのか?」
「いいえ。でも、クロノさんの舌は信用してますから」
「それは、喜んでいいのか判らない評価だな」
「そうですか? 手放しでほめてるつもりですけど」
「僕の舌”は”というのは引っかかるがな」
「それ以外にも信用してる部分はありますよ」
クロノさんは俺の言葉を聞いて、不服そうな表情を浮かべる。
そんなクロノさんが口を開こうとしたとき、さっきの店員が俺達の
テーブルのそばに立つ。
「お待たせしました。ご注文の品です」
店員は数品の料理をテーブルの中央に置いた後、俺の前にはビールの入った
グラスを、クロノさんの前にはウィスキーの入ったグラスを置いて、
軽く頭を下げて去って行った。
クロノさんは店員がカウンターの中に入るまでその背中を見送る。
店員がカウンターの中に入ると、クロノさんは小さく息をつ
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