先頭車両。
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その日は、日頃から「自分は霊感が強い」といっている友人と一緒に
仙台の専門学校を見学に行っていた唯来。
唯来は、自分に霊感なんて無いだろうと思っていたし、
その子も注目を浴びたくて霊感が強いと言っているだけだと思っていた。
しかしこの日、唯来は「私にも霊感があるのかな」と思ってしまうような
出来事に遭遇した。
それは仙台からの帰りの新幹線でのこと。
ホームに入ったところで列車が到着した。
唯来たちが乗り込んだのは先頭車両。
しかし、見るからに傷だらけで
とても古いものだというのがひと目でわかってしまうその車両は、
だからだろうか、唯来たちの他には一人の老人がはるか後ろに座っているだけだった。
唯来たちは前から2列目の席に座り専門学校の話を始めた。
出発のアナウンスが流れ、車体は静かに前進を始めた。
それから数分も経っていなかったのではないだろうか。
その出来事は突然起こった。
ガガーーーーッ‥
古びた金属の擦れる音がして、自動ドアが開く。
車両の両端にある自動ドアの前の部分だ。
丁度、唯来たちがいる方のー‥。
だが、開いたはいいものの誰も入ってくる気配がない。
そして、何事もなかったかのように扉は閉まる。
誰かが入ってこようとして何らかの理由でやめたのだろう。
はじめはそう思った。
が、先ほど扉が閉まってから30秒もしないうちにまた扉が開く。
ガガーーーーッ‥
やはり誰も入ってこない。
ガガガーーーーーーッ‥
不快な音は続く…。
その行為を幾度となく繰り返すうちに、
唯来はあることに気がつき始めていた。
誰かがいる。
姿は見えないが、確かに何者かの気配がそこにある。
唯来はその気配に意識を集中させる。
すると、今まで扉付近で感じていた気配が移動を始めた。
こっちに来る…。
唯来は思わぬ出来事にとっさに身構える。
ギシギシッ
椅子の歪む音がした。
唯来たちが座っている列の、通路を挟んだ反対側の席だ。
唯来は安堵した。
こちらに危害を加えるものでは無さそうだ。
体の力が抜けたのもつかの間。
「座ったね。」
耳元で囁いたのは友人だ。
唯来は驚いた。
やはり今そこには何者かが存在して、そして座っている。
唯来の目には何も見えない。
友人の目には見えているかは正直わからない。
しかし意見は一致する。
唯来にはそれだけで十分だった。
新幹線が次の駅に到着すると、例のごとく扉が開く。
「出て行ったね」
友人が言う。
「うん。」と唯来。
それまで感じていた気配が消え、緊迫し
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