第二幕その一
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第二幕その一
第二幕 二人の若者
村の外れの森の側。そこに一人の若者が座り込んでいた。
茶色の髪に赤っぽい顔をしている。童顔でそれ程男前とは言えない。顔立ちは悪くはないが何処かぼんやりとした感じを与える。大人しそうな顔だ。
青い服に白いズボンを身に着けている。服から見るにわりかし裕福な生まれのようである。それ故か本当にぼんやりとした若者であった。
「お、そこにいたか」
切り株の上に座り込んでいる彼に樵が話し掛けてきた。
「ヴァシェク、またどうしてこんなところにるんだい?」
「あ、おじさん」
ヴァシェクは名前を呼ばれて顔を上げた。
「ちょっとね、考え事をしてたんだ」
「一体何についてだい?」
「うん、ちょっとね」
ヴァシェクは樵に困ったような顔をして応えた。
「今僕のお父さんとお母さんが僕の結婚のことで話を進めてるよね」
「ああ」
「それがね、心配なんだ」
「どうしてだい?」
「僕の好きな人が相手じゃないんじゃないかなあ、って。もしそうなったらどうしよう」
「何だ、相手のことを知らされていないのかい」
「うん」
ヴァシェクは力なくそう答えた。
「一体どんな人なのかなあ。エスメラダ先生だったらいいけれど」
村の学校の先生である。ヴァシェクより少し年上だ。気が強いが頭の回転が早い美人だ。ヴァシェクは彼女に密かに憧れているのである。
「できたら先生と一緒になれたら」
「それは御前さんの親父さんとお袋さんに言うべきじゃないのかい?」
「うん」
ヴァシェクはまた頷いた。
「僕だって言いたいけれど。何か怖いんだ」
「どうしてだい?」
「反対されるから。そうしたら何もかもお終いだし」
「おいおい」
樵はそれを聞いて呆れたような声を出した。
「そんなんじゃあ何をやっても駄目だぞ。いいかヴァシェク」
見るに見かねた樵が彼に対して語りはじめた。
「男ってのはなあ、度胸だ」
「そうなの?」
「御前さんにはまだないがな。度胸が全てなんだ」
樵は胸をドン、と叩いてヴァシェクに対してそう言った。
「度胸なんだ、いいな」
「そうなんだ」
「それで女なんてのはな、押し通せばいいんだよ。一に押す、ニに押す」
「押してばかりなんだね」
「そうさ。三も四も押す、そして最後まで押し通すんだ。俺はそれで今のかみさんを手に入れたんだ」
ここで自慢気に笑った。
「どうだ、わかったか」
「ううん」
しかしよくはわかっていないようであった。首を傾げる。
「そうなのかなあ。僕にはよくわからないや」
「わからないでは樵どころかかみさんの貰い手もねえぞ」
「わかってるけど」
「じゃあ話を変えよう。心だ」
「心」
ヴァシェクはそれを聞いて
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