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男女美醜の反転した世界にて
反転した世界にて1
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 だけど、荒井くんは微笑んで手を振り返すだけで、その場から動こうとはしなかった。

「……あれ? 今日はいつもの男子たちと一緒に登校しないんだ?」

 いつもだったらこの辺りで荒井くんとは別れて、一人で校舎にまで向かうことになるのだけど。
 僕の質問に対して、荒井くんは逆に不思議そうな顔で首を傾げて、

「……なんだよいきなり。いつも一緒に登校する男子って、おまえだろ?」
「え……?」

 当たり前のように言ってのける荒井くん。不覚にも、ちょっとだけときめいちゃったじゃないか。
 流石はツンデレの素養を持つ男。侮れない。
 実際のところ、たまに一緒に登校することはあったけれど、それでもいつもなんてことはないのだが。僕なんかの好感度を上げて何の意味があるのだろうか。
 荒井くんの顔をじっと見つめる。

「荒井くん……」
「ん? ……どうしたよ」

 (*´∀`)→(・∀・)
 ときめいていた心が沈静化した。眼鏡レス+ツインテールな荒井くんのそれは、相当な破壊力を持ったブサイク顔だった。

「なにやってんだか。ほら、早くいこうぜ、予鈴鳴っちまう」
「うん」

 駅から高校までの道のり。 
 その間、むすっと黙り込んでいるのも悪いと思ったので、適当に話しかけてみる。

「今日はメガネ、かけてないんだね?」
「あん? 俺、基本的にコンタクトだぜ。眼鏡なんて滅多にかけないよ」
「……そう」

『ていうか、学校で眼鏡かけてるところ見せたことあったっけ?』、と。これまた逆に訝しげな表情で問い返す荒井くん。 
 ほんの少しだけ、不機嫌そうな顔。『いつもかけてるじゃろがい、このメガネ魔人』などと言い返すこともできず、言葉を濁すことで事なきを得る。
 なにが逆鱗に触れてしまったのかはわからないけれど。怖いので深く突っ込まない。
 僕の悪い癖だとは自覚しているけど、場の空気を悪くするよりはましだと思う。どうせ空気なんて読めないんだったら、口数を減らす――ないし口を閉じておけばいいのだ。
 僕なりの処世術。――処世できているかどうかは、甚だ疑問ではあるけれど。

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