プロローグ
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「次の駅で降りてもらいますからね! 覚悟しなさいよ、あんた!」
「なんでこんなことに! こんなところに居られるか、俺は部屋に帰らせてもらう!!」
捲し立てる女の人に対して、どうやら男の人はあまりのことにパニックになっているようだ。言っていることが支離滅裂なうえ、わざわざ死亡フラグを立てている。
そうこうしているうちに電車は止まり、騒ぎに気付いた駅員が電車に入ってくる。
十分ほど、駅員さんが周りの人や女性の話を聞いた上で、男の人を車外へ連れ出していった。
……くわばらくわばら。
痴姦は冤罪を証明するのが非常に難しいのだという。無論、本当にやっていたのだとしたら救いようはないけれど、もしも無実の罪でしょっぴかれたりしたら、あまりにも悲惨じゃないか。
――僕も他人ごとではないかもしれないのだ。見るからに根暗でブサイクで女性に飢えていそうな僕は、周りから犯罪者予備軍として認識されていてもおかしくはない。
事実、いまも近くにいる女子(制服を見るに、他校の女子校生だろう)が。僕の顔を見た途端、あからさまに嫌そうな顔をして距離を離そうとしている。
車内はすし詰め状態とは言わずとも、大分混んでいる。
けれど、僕の周りだけ点々とエアポケットでもあるかのように隙間が空いていた。
またしても、なんだかとてもやるせない気分になって、僕は心の中でため息をついた。
◇
電車から降りて、しばらく。
学校から駅までが五分。電車に揺られることに十分。家から駅まで大体十分ほど。
つまり、このまま真っ直ぐ歩けば十分ほどで家まで到着する。
家に帰れば、義妹や義姉が画面の向こう側で待っている。彼女たちの暖かい笑顔だけが、僕の荒んだ心を癒してくれるのだ。自然と、足取りも早くなっていく。このペースなら、8分ほどで家まで到着できるかもしれない。
なんてやっていたので、足元に注意を向けていなかった僕は、何かに躓いてしまう。
「うわっ!」
つんのめって、おでこから地面に思いっきりダイブ。
ゴチンッ! と、いい音。木魚を木の棒で叩き付けたかのように小気味良い音だった。
「痛ぅっ!」
けれど痛みは全然小気味良くない。
ぐにゃぐにゃと歪む視界。その中で星がキラキラと光っているような錯覚まで見える。
耳鳴りまで聞こえてきた。すぐに立ち上がれず、その場でうずくまるような姿勢に。
「ぐぬぬ……、今日は厄日か。畜生」
なんだか泣きたくなる。
――だけど、いけない。こんなところを誰かに見られたら、『道のど真ん中にデッカイ犬の糞が落ちてる』と言われて馬鹿にされてしまう。
それでなくとも、住宅街のど真ん中で蹲っていたりしたら普通に迷惑だ。
「……」
暫しじっと
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