暁 〜小説投稿サイト〜
男女美醜の反転した世界にて
プロローグ
[2/9]

[1] [9] 最後 最初 [2]次話
直ギリギリだけれど、急げば何とかならないこともない。月に一回しかないから、一度でも出し損ねると溜りに溜まって不快なのだ。
 そんなこんなで、不燃ごみを集めて指定の袋へ。この時点で五分のロス。
 ゴミの収集場所は通学路から外れているので、非常に大きなタイムロスだと言わざるを得ない。
 電車、間に合うかな……。満員電車は嫌いだから、できればラッシュの時間帯とはずらして乗りたいのだけど――。


 ◇


 駄目でした。
 満員電車というのは、何度体験しても慣れない。これから先、たとえば高校を卒業して社会人になったとして。絶対に電車通勤が必要な職場だけは選ばない。このご時世、贅沢を言えるような立場にないのはわかっているけれど。
 突然だけれど、僕――赤沢拓郎は主夫になりたい。
 甘い願望、というほどではないと思う。
 現状、親の都合で一人暮らしを強いられている。
 甲斐甲斐しく家事を手伝ってくれる幼馴染は画面から出てこないし、仕送りだって食費と日用品だけで綺麗に使い切れてしまう金額しか送られてこない。 
 一人息子に対してこの仕打ちはどうかと思うけれど、『自分のことは自分でやれ』という、立派教育方針の元、海外を転々とすることを良しとせず、日本に残ることを望んだのは僕自身なのだから、文句を言っても仕方がない。

 世の専業主婦の方々は、僕とはまた違った悩みや、相応の苦労を抱えているのだろう。けれど、僕も別に舐めているわけではなくて、専業主婦――もとい、専業主夫こそ、僕の天職に違いないと、客観的にして冷静にそして本気で、僕はそう思っている。
 今朝の夢は、まさに僕の理想とする未来だった。美人の奥さんを貰って、毎日家族のために頑張って――。
 
 しかし悲しいかな、現実はそうはいかない。専業主夫への道のりは険しい。険しいというか、あまりにも分厚く強大な壁が立ちはだかっていて、僕なんかではまるで歯が立たない。
 相手が、いないのだ。いないというか影も形も想像すらできないのです。
 ああ、無常……。
 ……などと、
 今日も今日とて満員電車のすし詰め状態の恐怖から現実逃避をしようとして失敗。
 
 隣の車両が視界に入った。
 向こうは女性専用車両だ。
 あちらの車両は明らかに人もまばら。立っている人の方が多いけれど、詰めれば座席に座れそうなくらいには空いていた。
 別に文句があるわけではないけれど。ちょっとだけやるせない気分になった。
 

 ◇


 電車から降りて、改札へ。
 駅から出て通学路に出ると、見知った男子の顔を見つける。近寄って挨拶しようか、どうするか迷っていると、向こうもこちらに気が付いたようで、近づいてきた。

「おっす、拓郎。――相変わらず辛気臭い顔してんなぁお前。テンション下が
[1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ