暁 〜小説投稿サイト〜
売られた花嫁
第一幕その四
[2/3]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
間達の問いにそう答える。
「このビールにしろワインにしろ恋人と一緒に飲むのが一番美味いだろ」
「まあな」
 仲間達はそれに頷いた。
「男同士で飲むよりはな。女の子と一緒に飲んだ方がいい」
「前に座っているのが恋人ならな。それはあんたに同意するよ」
「有り難う」
 イェニークはそれを聞き満足そうに頷いた。
「有り難いね、わかってくれるとは」
「そういえばあんたあの娘とはどうなっているんだい?」
「?ああ、マジェンカのことか」
「マジェンカ!?」
 それを店の側を通り掛ったケツァルが聞いた。
「今マジェンカと言ったかな」
 そして耳をそばだてる。聴けば確かにマジェンカの話をしていた。
「うまくいってるよ」
 イェニークは上機嫌で語っていた。
「婚約もしたし。もうすぐ僕は彼女と一緒になれるよ」
「それは何より」
「何よりではないわ」
 ケツァルはイェニークの仲間達の言葉にそう突っ込みを入れた。
「そんなことされたらたまったものではない」
「けれど気をつけなよ」
 店の中で仲間の一人がイェニークにそう言った。
「どうしてだい?」
「何でもあの娘最近親が縁談を進めてるっていうじゃないか」
「うかうかしてると御前さんも危ないんじゃないか?」
「ああ、あれね」
 イェニークはその話を聞き少し考える目をした。
「それなら心配ないよ」
「何かあるのかい?」
「どういうことだ」
 仲間達はそれを聞き彼に問いケツァルは不安な顔になった。
「それはこれからのお楽しみ」
「おお、何か面白そうだな」
「面白い!?馬鹿を言え」
 だがケツァルはそれを聞いて不機嫌な顔になった。
「商売の邪魔をされてたまるか。さて」
 彼は店の入口の方に回った。
「情報収集じゃ。一体どんな奴か見ておかなくてはな」
 そして店に入った。
「おかみ、席は何処だい」
「あそこはどうですか」
 店のおかみは若者達がいる席のすぐ側を指差した。
「いいな。そこにしよう」
「はい。ご注文は」
「ビールとソーセージ」
 彼はまずはそれを注文した。
「あとはジャガイモをふかしたものを。それでいい」
「わかりました。ではそれで」
「うむ」
 彼はテーブルに着いた。そして飲みながらイェニーク達をチラリと見た。
(この中の誰だ、そのイェニークというのは)
 まずはイェニークを探しはじめた。それはすぐに見つかった。
「ところでイェニーク」
「何だい」
 黒いチョッキの小粋な若者がそれに応えたのだ。
(あいつか)
 ケツァルはすぐに彼に目星をつけた。
(あいつのせいでいらん苦労をすることになるな)
 舌打ちしたかったがイェニークに聞かれるのを警戒してそれは止めた。そして言った。
「恋は確かに大切なもの」
「ええ、
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ