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売られた花嫁
第三幕その七
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「話は聞いたわ」
「おっ」
 皆その誰かの姿を認めて楽しそうな声をあげた。
「よく来てくれた」
「真打ち登場だな」
「どういたしまして」
 誰かは村人達の声ににこやかに応えた。それは他ならぬエスメラダであった。
「先生」
「ヴァシェク君」
 エスメラダは戸惑うヴァシェクに対して問う。両手首の付け根を腰の横にあて首を少し左に傾けている。
「話は聞いたわ」
「は、はい」
 ヴァシェクはドギマギしながら彼女に応える。
「私と結婚したいそうね」
「え、ええ」
 彼は震えていた。
「その通りです」
「さっきケツァルさんからもらった契約書だけれど」
「はい」
「私を心から愛してくれる人ってあるわね」
「ええ」
「それは誰なのかな、って思ったけれど君だったのね」
「駄目でしょうか」
「そうね」
 エスメラダはここでくすりと思わせぶりに微笑んだ。
「一つ私からも聞きたいんだkれど」
「何ですか?」
「もし駄目って言ったらどうするの?」
「それは・・・・・・」
 ヴァシェクはそれを聞いただけで泣きそうな顔になった。
「言わないで下さい、そんなことは」
「じゃあもう決まったわね」
 エスメラダはそう言ってにこりと微笑んだ。
「私が結婚相手に求める条件はね」
「はい」
 ヴァシェクは顔を思いきりエスメラダに近づけてきた。それだけでもう首がちぎれそうである。
「一つだけなの」
「一つだけ」
「そうよ。私を愛してくれているかどうか」
「えっ」
 それを聞いて声がうわずった。
「それは一体」
「聞こえなかったかしら。愛しているかどうか、私が必要なのはそれだけ。ヴァシェク、貴方はどうなの?」
「どうなのって言われても」
 内気なヴァシェクはまごまごしている。

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