第三幕その四
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冷静であった。
「あれは間違いありませんね」
「ええ、勿論です」
ケツァルは笑顔でそれに応えた。
「確かに。マジェンカさんはミーハさんの息子さんと結婚する」
「はい」
「そして貴方は三〇〇グルデンでその権利を譲った。確かにそうあります」
「そうですね。それはケツァルさんもよくわかっておられますね」
「ええ。イェニークさんの御好意は忘れません」
「好意!?何てこと」
マジェンカは怒ったままであった。
「私を売っておいて」
「まあマジェンカさん」
ケツァルが宥めるが一向に聞こうとはしない。
「私は彼をもう二度と見たくないわ」
「それで」
イェニークはそれを聞いて一瞬だけであるがその緑の目を悲しくさせた。しかしそれは一瞬だったのでマジェンカにもケツァルにもわからなかった。
「ミーハさんの息子さんで間違いはないんですね」
「何度でも申し上げますよ」
ケツァルは上機嫌であった。
「イェニークさんは承諾して下さいました」
「そう」
「三〇〇グルデンで」
「またお金の話!」
マジェンカはもうお金の話なぞ聞きたくもなかった。
「マジェンカさんとミーハさんとこの息子さんの結婚を認めて下さいました。それに間違いはありません」
「そうです。マジェンカ、聞いたね」
「裏切りを聞かせるつもりなの!?」
マジェンカは怖い顔になった。まるで魔女のようであった。
「違う、そうじゃない」
「私にはそうとしか思えないわ」
「信じてくれ」
「どうしたらそれができるのか私の方が知りたいわよ!」
「そうじゃない。はっきり言おう」
「何を!?」
イェニークを睨みつける。
「ミーハの息子は君のことを愛していると。これでもまだわからないのかい」
「そんなに私をあの男と結婚させたいの!!」
さらに怒りが増した。これも当然であった。どう見ても火に油を注いでいるだけであるからだ。ケツァルもそれを見て流石に首を傾げてしまっていた。
「彼は何を考えているのだろう」
それが最初の感想であった。
「こんなにあの娘を怒らせて。怒らせても何にもならないというのに」
彼の考えも当然であった。普通ならそう思う。だがイェニークは全く違ったのである。これは彼が普通ではないからなのであろうか。どうも違うようである。
「いい加減にして!」
「だから信じてくれ!」
「人を呼ぶわよ!」
「呼べばいい!」
殆ど売り言葉に買い言葉であった。
「それで君がわかってくれるのなら」
「わかる必要はんてないわ!」
「いや、待ってくれ」
ここで誰かの声が聞こえてきた。
「え!?」
それを聞いてマジェンカが少し落ち着いた。
「マジェンカ、まあ落ち着いて」
「気持ちはわかるけれど」
見れば村人達であった。彼等も騒ぎを
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