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売られた花嫁
第三幕その二
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「いや、ミーハさんハータさん」
 だがケツァルはそんな二人を安心させるように穏やかな声で二人の名を呼んだ。
「何か」
「御心配には及びませんよ。私がヴァシェク君についておりますから」
 そう言って胸を張った。次にその胸を左の拳でドンと叩く。
「そうですか」
「はい、ヴァシェク君は絶対にマジェンカさんと結婚できますよ」
「マジェンカと」
 それを聞いたヴァシェクの顔が青くなった。
「そうなったら僕は不幸に」
「何かあったのかい?」
 ケツァルだけでなく彼の両親もそんな彼を見て心配になった。
「何かあればお言いよ」
 ハータは特に心配そうであった。母親であるが為か。
「う、うん」
「御前には絶対に幸せになって欲しいからね」
「幸せに」
「そうさ。だからしっかりしておくれ。いいな」
「うん」
 ヴァシェクは母親に言われながらもその顔を青くさせたままであった。だがここで先程の若者と新しい契約書のことを思い出した。そしてその青い顔を元に戻した。

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