12話
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「兄ちゃん」
「大丈夫だ」
心配そうなリュウの言葉にロイドは虚勢を張った。
震えはしなかったが内心では恐怖心で一杯のロイドは兄と姉のことを思い出していた。
初任務でこれだ。結局、兄貴みたいにはなれなかったな。セシル姉も泣かしちゃうな。
前に進み出たロイドの腕に軟体魔獣の触手が巻きついた。トンファーが腕ごと溶かされそうになり激痛が襲う。魔獣は巨大故に溶かす力も強い。だが引っ張って動きを止めることに成功した。
「よし。行ってくれ!」
ランディたちが駆け出そうとした時、吹き抜けの上層部から男の声が響いた。
「やれやれ、自己犠牲も結構だが短絡的過ぎるな」
全員の視線が上へ向いた。
そこには長身で長い黒髪のコートの男が立っていた。頬には深い傷痕があり、腕には刃が光る長刀が握られていた。
その男が魔獣の方へ跳ぶと刀を振るって一閃して着地した。
少なくとも見ていたロイドたちには一振りしたようにしか見えなかった。
その瞬間大型の軟体魔獣は斬り裂かれ爆発した。
ロイドは先に触手が斬られたのか触手が切れて背後に吹き飛び尻餅をついていて爆発で飛び散る粘液には当たらなかった。
信じられないものを見たと驚愕したまま動けないロイドたちは目の前の男を呆然と見ていた。
それを打ち破ったのは子供たちの歓声だった。
「すげえーー!すごすぎるよ!アリオスさん!うっわー!いいもん見ちゃったなあ!」
「わあ、ありがとうございます。アリオスさん。でも、どうしてここに?」
「広場のマンホールに子供が入っていくのを見たという報せがあってな。しかし無茶をする。もしものことがあればどうするつもりだ?」
恐怖から一転しての二人の大喜びのはしゃぎようで、態度がロイドたちとは全く違っていた。
絶大な尊敬と信頼と安心感。
それがこの現れた男に向けられていた。
その証拠に減らず口をたたく生意気なリュウが男が責める口調になればすぐに謝ったのだ。
「まあ無事だったのなら良いだろう。もう夕方だ。家に帰るぞ」
「はい!」
出口に向かって行く男に付いて行く二人をロイドたちは見つめているだけで動けないでいた。
絶体絶命のところから助かった安堵と一刀で助けてみせた男の実力。特攻覚悟で道を切り開こうとしたのに簡単に倒された拍子抜け感。
それは圧倒的な強さで助けられれば子供たちも感謝もするだろうし自分たちには文句を言って騒いでいたのにあっさりと帰るように言い含める手際の良さには当然だと思いつつも自分たちだって助けたのに礼も言われず最後に良い所を全部持って行かれた納得の行かなさもあった。
そういう状況であるから何を言ったら良いのかわからず何も言えなかったのだ。
そうしていると男がどうしたと振り返った。
「お前たちは戻ら
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