第三十九話
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)になると右手に構えた斧を後方へ構え、己の全力を懸けた一撃を行おうとする様が見て取れた。
じりじりと有利な間合いを取ろうとするピサール、俺は視界の端に危険を感じたので思い切り転がるように左側へ身を投げ出したのはピサールの仲間が割って入り斧を振り下ろしたからだ。
地面の岩に斧がぶち当たり火花が上がったが、その刹那、その海賊は眉間に矢を受け落命した。
体勢が不利になった俺にピサールは踊りかかってきた。
思わず盾を投げつけ、それをピサールは防いだ為に出来た隙を活かして立ち上がると目についたものがあった。
互いに構えたのは右手の武器一本、だが……
睨み合いに痺れを切らしたピサールが踏みこんで来ようとしたその時、俺は右足を思い切り踏み込み、叩きつけるほどの気持ちで行った。
先程斧を撃ち落とす為に投げつけた槍の刃の逆サイド、石突と呼ばれる部分を踏み込むと梃子の原理よろしく勢いよく跳ね上がり、思いがけない間合いに現れた致命の刃へとピサールの体は吸いこまれた……
「お前たちの頭目、ピサールは討ちとった!無駄な抵抗は止め降伏せよ!」
俺が声を張り上げ何度も叫ぶと散発的な抵抗も終息し、逃げ切れなかった海賊たちは捕虜となった。
先程窮地を救ってくれた弓兵に礼を述べ、彼はお互い様などと謙遜していたがピサールと戦いながらもう一人を相手どるなど危険極まり無かっただけに、さらにもう一度感謝の気持ちを伝えた。
完勝と言ったところであろうが、死んだ振りをして襲いかかる海賊が居るとも限らないので油断なく戦場を回った。
途中、ヴォルツとベオウルフと顔を合わせたので礼を述べ、互いの奮戦を讃えあい部隊の死傷者を確認し、傷の重い者にはエーディンさんの力を借りることにした。
彼女は先日に続き、こんな争い事で胸を痛めているかと思うが見た目には出さず、味方も海賊も問わずその死を悼んでいた。
戦後処理をしていると沖合から味方の軍船が一隻やってきて、船首からひらっと地面に着地したレイミアは俺達を褒めそやしてくれた。
彼女が言うには海賊の戦力はほぼ壊滅に等しく、それはもう一人の首魁、ドバールも討ちとったということからも言えるとのことだ。
もちろん数人規模の集まりはいくらでも残っているだろうが、それを完全に潰すなんてことは不可能に近いだろう……
海岸から町側へ進んだ空き地にとりあえず海賊の死者を埋め、俺もエーディンさんに倣い、祈りを捧げたが、俺のそれはきっと自己満足の偽善に違いない……
これについては、あとでクロード神父に慰霊の式典をお願いする運びとなった。
味方の死者はそう多く無いが丁重にマディノへと運ばれるのは言うまでも無い。
海賊を潰したので、ブリギッドの行方を少しは探しやすくなったと思いたい。
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