第三十九話
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
名生み出した。
これにひるんだ海賊であったが、陣形の内側からは未だ投石や弓から放たれた矢は続き、彼らを打ち据え続けた。
海賊側は一度引いて体勢を整えるべきであろうが、そこは雑多な集団。
統制の取れた行動など望むべくも無く、後方から追いついてくる部隊からは進め! 殺せ! と、叱咤される訳であるから前に出るより他は無く、俺たちに殺され続けるより他は無かった。
こうして戦況に停滞が訪れたので、次の一手を打つ。
「合図を!」
俺の号令と共に陣形の内側、遠距離攻撃を専門に担っていた傭兵が懐から鹿の角で作られた風笛を矢にくくりつけ、遠くを見定めて弓を射た。
海賊達のわずかな頭上、浜風に乗った矢は風笛と共にさながら年老いた魔女の甲高い笑い声とでも形容しうる不気味な音を響かせて戦場を駆け抜けた。
戦場に鬨の声が響き、藪に隠れていたわずかな騎兵とその数倍の随伴兵、海岸の洞窟からも隠れていた傭兵達が一気に戦場へとなだれこんだ。
わずかな騎兵とはいえ、この状況を横撃された海賊達はひとたまりもなく打ち砕かれ、なすすべもなく海岸に残された端艇や小型船に逃げ込み海へと逃げるか、絶望的な抵抗を続けるか、降伏するか……
絶望的な抵抗を続ける男が俺の前へと突き進んできた。
走り込みながら一本の斧を俺に投げつけ、すぐさま己の腰にぶらさげたもう一本の斧に手をかけると凄まじい勢いで跳躍し振りかぶって振り下ろしてきた。
俺は投げつけられた斧に槍を投げ当てて叩き落とし、腰間の剣に手を伸ばして引き抜きざまにこの海賊の斧を受け止めた。
「我はレンスターのミュアハ! おぬしの名、聞いておこう!」
力比べに打ち勝ち、海賊を押しやった俺は相当な手練とおぼしきこの海賊に問うてみた。
「……ピサール」
「なるほど、頭目の一人だな。相手にとって不足なし!」
俺は地面と水平に右手を伸ばし剣もそれに倣わせ、左手を胸側に引き寄せ盾を構えて地を蹴り、体当たりを敢行した。
真正面から盾で受け止めては、こんな木盾では割れ、砕けるであろうから、引き寄せてあった左手を思い切り外側に開き、振り下ろされた斧の側面にぶち当てた。
そのまま、奥歯を噛みしめると頭突きをピサールの鼻っぱしらに叩きこむ、俺も衝撃と痛みにふらつくが、そこは気合いで右手の剣を下から切り上げ、返す一撃で振り下ろした。
それには手ごたえがあり、とっさに飛びすさったピサールの左手の指が幾本かぼとぼとと地面に落下した。
「……降伏せよ」
戦場は既に掃討戦の段階に進んでおり、沖合では海賊船から煙が上がり、その周辺には幾隻かのマディノ側の戦闘艦や護衛艦が取り囲んでいるように見え、大勢は決したようであったから降伏勧告を行った。
鼻と左手から鮮血が続くピサールは応えようとせず、左半身(はんみ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ