第三十九話
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大型船は座礁を恐れてなのだろう、海岸には三隻の小型船や多数の端艇が押し寄せてはいるものの、沖のほうにはいまだ二隻の海賊船が控えていた。
悪臭が少しずつ漂ってくるのは海賊が近づいているからなのは間違いない。
帆船だけで奴らは構成されているのでは無く、ガレー船の割合が高いと思われる。
もちろん帆船の方にも補助的に漕ぎ手は用いられているのだろうが……漕ぎ手への衛生面での配慮が皆無なのだろう。
俺たち漁師小屋での待機メンバーは敵の規模に対して少なすぎたので、急遽伏兵の側から十名単位で借り受け、身を潜めていた。
上陸していた海賊達はなるべく音を立てないよう静かに上陸し、乗って来た艇ごとであろうかそれぞれグループを作り、船が流されないよう慎重に作業していた。
「わたしはここだ!」
あらかじめ打ち合せた手はず通りにエーディンさんは叫びながら、ろくに訓練もしてはいないわりに堂に入った姿で海賊の群れの中へ矢を放つと漁師小屋へと駆けだした。
半数以上の船が接岸し、大勢の海賊たちが襲いかかるタイミングをいまかいまかと待ちわびていた所にこれである。
それぞれの小集団がてんでばらばらに、だが、方角だけは統一されて追い始めた。
乳母日傘で育ったとは思えぬ健脚を発揮し、エーディンさんが小屋に駆けこんできたので、それと交代で俺は小屋から姿を現し扉を閉める。
すると部屋の内側からは重いもので扉に重しをかけ、つっかえ棒をかける音が聞こえてきた。
「今だ! いけー!」
号令をかけると同時に立て掛けてあった投槍を次々と海賊の群れに投げ込むと面白いように当たり、
胸や腹を貫かれて二三歩進むともんどりを打って倒れる者、顔面を貫かれ即死する者、腕や足を掠めてその痛みに行き足を鈍らせる者……
これは俺だけが作りだした光景では無い。
号令と共に漁師小屋の陰に控えていた皆が何かしらの遠距離攻撃……俺と同じような投槍の他にも
弓から放たれた致命の銀の筋、石の礫、思い思いの手段で死者と負傷者と憎しみと恨みを量産していった。
大勢の仲間が落命し傷を負いながらも、それを踏み越え海賊の一団は続々と迫って来る。
ぎりぎりまで遠距離攻撃をしつつも、俺たちは互いに仲間同士の距離を縮め陣形を組み接近戦の準備を整える。
時折海賊側も死んだ仲間の斧を拾って投げつけてくるが、それは盾で受け、武器で叩き落とし、誰一人として傷を負いはしない。
投槍は既に使い尽くしたので投石していた俺だが、頃合いを見て愛用の槍を地面から引き抜き、陣形から三歩前に……打ち合せ通りの立ち位置に着くと縦横に槍を振りまわし、海賊の多くを引きつける。
鬨の声を上げながら同時に三人の海賊が斬りかかって来たが、槍を真横に一閃すると二人の死者と片腕を斬り落とされた被害者を一
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