SAO編−白百合の刃−
SAO6-兄妹の刃舞
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だよ! 逃げるのが恥なら、その恥を知らないといけないのよ! 負けたからって、命を無駄にするような行動をしないで!」
だが私の叫びは、彼に届いてくれはしなかった。コーバッツ中佐は怒号を上げ続け、部隊を立て直していく。
「おい、どうなっているんだ!!」
ようやくクライン達、風林火山のメンバーが追いつき、兄が手早く事態を伝える。
私達が斬り込んで連中の退路を開くことは出来るかもしれない。いや、違う。出来なきゃ『軍』は救えない。けども、緊急脱出不可能な空間で、こちらに死者が出る可能性は少なからずあるかもしれない。何よりも人数が足りない。
「全員……突撃……!」
あれこれいろいろ考えているうちに、コーバッツが悪魔の向こう側で部隊を立て直したらしい。
……考えている暇はない。
目の前にいる人達を助けるんだ!
「やめ」
突撃しようとした時、ドウセツが右手で制して私を止めた。
「ドウセツ!」
「いいから」
言葉で止めたドウセツは、瞬時にボス部屋へ踏み込み、『グリームアイズ』に近づくために疾走し始めた。
「なんで……」
何故、私を止めてドウセツが先に行く? 足が速いから? 敏捷力が高いから自分が向かったほうがいいからか?
……それだけじゃない?
「まさかっ!」
「おい、キリカ!」
兄に止められそうになるも、私はボス部屋に踏み入れドウセツに向かって一直線に走り出す。
嫌な予感が間違いないならば、あってほしくないことだってあるが、ドウセツは『軍』に攻撃される前に、囮になるために私を止め、一人で勝手に飛び出した。
人数が足りていない、この状況でみんなを助けるには誰かが囮になって、その間に救うのが私の中で思いついた対策。それをドウセツは実行しようとするならば、ドウセツが危ない!
私は疾走に駆けるドウセツに、なんとか追いつこうと必死に走り出した。
だけど。
私達が走り出した時には……遅かった。
まず軍の八人が一斉に飛びかかるが、満足に剣技を繰り出すことなんて出来ず、ただ混乱するだけだった。その一人、コーバッツはグリームアイズの巨剣の餌食にされてしまい、すくい上げられるように斬り飛ばされた。
「ぐはっ」
私の目の前に激しく落下。唐突すぎたので、足を止めてしまった。
そして彼と目が合い、無数の断片となって消滅する前に口がゆっくり動き、
あり得ない。
誰に向かうわけでもない、その言葉は小さかった。そしてその直後、彼はあっけなく消滅。
この瞬間、コーバッツがリトライすることもなく、萱場晶彦によって書き換えられたアインクラッドの世界で死んで逝った。
同時に、現実世界でもコーバッツの死が確定した。
……私が、私のせい
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