アインクラッド 前編
情報屋とストーカーは紙一重
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何者かに追い詰められ、巨木を背にして喚いている時だった。
作戦なしに姿を晒すのは危険と判断したマサキは、横のトウマと共に木陰へと隠れ、耳を澄ます。会話の断片から事情を推測した結果、どうやらアルゴを囲んでいる三人は情報屋をしているようで、アルゴしか知らない情報を得ようと接触したが、取引を拒否され、追い掛け回していたらしい。
(全く……いつから情報屋のルビはストーカーになったんだ――ん?)
呆れたように伏せられたマサキの目が、一瞬硬直した。そして、腰から投擲用のピックを取り出す。レベルアップによってスキルスロットが増えたため、セットしたものだ。
「マサキ、ひょっとして……?」
「ああ。……お前は先に帰っていろ。レベル差があっても、筋力優先の能力構成だと厳しいかも知れん」
「……分かった」
マサキの考えを悟ったらしいトウマが不安そうに訊くが、マサキは気にせずピックを持った右手を肩の上に持っていく。やがてピックが淡い光をまとい、投剣スキルで最も基本的な《シングルシュート》によって撃ち出された。
「さて、行くか」
短く呟いたマサキは、相変わらず喚きあっている彼らの許へ向かって行った。
「情報屋ってのは、いつから脅迫まがいのことをするようになったんだ?」
突如背後から聞こえた声に、アルゴに詰め寄っていた情報屋連中は一斉に振り返った。驚愕の表情を浮かべながら体をビクリと震わせて回転させるその姿は、なかなかに滑稽だったが、マサキはポーカーフェイスを維持する。彼ら全員の視線がマサキとトウマに集まっている今の状況ならば、アルゴの敏捷力を持ってすれば簡単に逃げ出せるのだろうが、それをしない辺り、どうやらアルゴも素で驚いているらしい。
「だ、誰だ!!」
「こっちは今取り込み中なんだ! 帰ってくれ!!」
苛立ちながら叫ぶ彼らに対し、マサキは両手を挙げて敵意がないことをアピールする。
「まあ、待て。別に俺は、あんたらに介入するつもりはない」
「だったら……」
「が、しかし」
マサキは一度言葉を切り、全体を一瞥して続けた。
「これは親切心からのアドバイスだが……、あまり大声を上げない方がいい。……と言っても、もう遅かったみたいではあるがな」
そう言って、マサキはあさっての方向に視線を投げる。すると、この辺りを徘徊している植物型モンスター《リトルネペント》が、大挙して押し寄せてきていた。
途端、彼らの表情が驚愕から恐怖に変わった。単体ではなく、集団との接敵は想定外だったのだろう、武器も出さずにただ慌てている。そして、マサキはそれを確認すると、すかさず口を開いた。
「まだ十秒程度の時間はあるだろう。さっさと逃げた方が身のためじゃないのか?」
「ぐ……
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