アインクラッド 前編
情報屋とストーカーは紙一重
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レージにしまい、待ち人――鼠のアルゴを待った。
今日マサキが彼女と会うことに、特に重要な意味があるわけではない。彼女に依頼していた情報が手に入ったから、受け渡しをするというだけのことだ。さして重大な情報というわけではないため、マサキは「情報の受け渡しはメールでも構わない」と伝えてあったのだが、アルゴに拒否された。曰く、 「どんな情報でも、受け渡しはできるだけ直接。これは情報屋として譲れない掟なんだヨ!」らしい。
と、いうわけでマサキは指定された場所に来ていたのだが……、肝心のアルゴがまだ来ていなかった。ボス攻略の時などに発行している“アルゴの攻略本”によって有名になったため、情報屋としては多忙な日々を送っている彼女だったが、何だかんだ言って仕事には真面目に取り組んでおり、今まで依頼をすっぽかしたことは一度たりともない。
――やはり、何かがあったのだろうか?
マサキの思考がそこまで達したとき、切れ長の目の前に、メールの受信を示すアイコンが表示された。
すっかりと慣れた手つきでウインドウを開く。すると、差出人は案の定彼女だった。
From: Argo
Main: すまなイ、ちょっと行けそうになさそうダ
一見しただけで相手が何かに追われていることが分かる、淡白な文章。マサキがフレンドの追跡機能を使うと、彼女を示す光点が、第一層フィールドの上をせわしなく動き回っていた。
「どうした?」
尋ねてくるトウマに対し、マサキはウインドウを他プレイヤー可視状態に設定すると、文面を差し出した。
「これって……マズくね?」
「少なくとも、美味くはないだろうな、まず間違いなく」
トウマの爽やかな顔が、きりりと引き締められた。ささやく声のトーンが変わり、ピリッとした緊張感が生まれる。
「行こう」
「ああ」
短く頷きあった後、トウマは目の前の転移門へと向かって走る。マサキも、まだ違和感が残る喉を押さえながら後を追った。
――さっきのハンバーガーに、何か喉に刺さりそうなものでも入っていたのだろうか?
転移門が作り出す幻想的な光のせいか、前を走るトウマの背中が、やけに眩しく見えた。
「さあ、今日という今日こそは、エクストラスキルの情報を教えてもらうぞ!」
「そうだそうだ! 情報の独占は許されないぞ!」
「うちはもう客からコルを受け取ってるんだ!」
「知るカ! だから、その情報は売れないって言ってるだロ!」
うっそうと茂る木々が空を覆い、太陽からの光をじめじめとした暗闇に変える、第一層《ホルンカ》近郊の森。コケとキノコがあちこちに生えている地面は、昼間でも暗く、ぬかるんでいる。
そんなこの場所にマサキたちが到着し、アルゴを発見したのは、ちょうどアルゴが
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