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東方調酒録
閑話 ミノムシは瓶の中
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やましいと思っていた。
「はい、 少し待ってね〜」
そう言ってミスティアは八目うなぎを焼き続けた。団扇と共にミスティアの羽も動いていた。なかなか効率がいいなと悠は考えていた。団扇の風に乗ってくる甘たれの香りは腹を刺激する。妹紅はよくこの状況を耐えたものだと感心をする。
「はい、 おまたせ〜」
 三人の前に串焼きと雀酒が並んだ。三人はとりあえず乾杯のように大きさが違う酒杯を合わせた。祝うこともないので無言であった。目だけは合わせて一緒に飲める嬉しさを確かめた。悠はそのまま雀酒は飲まず、串焼きを甘タレをこぼさないように口にはこんだ。温かい湯気とともに口の中に焼けた甘タレの香りが広がる。そのまま少し歯ごたえのある八目うなぎを噛むと豊富な脂身がタレと混ざって口の中を満たす。臭みは消され、レバーのような味が強くもなく、少なくもなく引き出せれている。それを飲み込んだのち、味が残っているうちに雀酒を口に流し込むと香ばしさとタレの余韻が酒の米の甘さ、コクと合わさって蘇ってくる。鼻から息を吸い込むと口の中は何とも表現できない状況となる。
「うまい……」
何度食べてもそれしか言えないのだった。霖之助はゆっくりと酒を飲んでいた。妹紅はすでに食べ終わり、酒もそこをついていたので、新しいのを注文していた。お腹が空いていたのであろう。

 三人はその後、おでんや純米大吟醸、悠が持ってきたウィスキーを愉しんでいた。この三人は騒ぐことはしない。誰かが話題を出し、それについてに二三話すだけで、会話の多いわけでもない。ただ一緒に肩を並べて酒を飲むだけである。ミスティアの話を聞き、静かな夜で冷たい風に当たりながら息の詰まらない友人と飲む酒は悠にとっては心の洗われるひと時となっている。横に置かれた瓶に入っているミノムシは満腹になっているようで、淡い光を発していた。

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