『保護』
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すし、スミスさんも良心で見送りに来てくれただけ。クロエは助けに来てくれたし、ウィルソン代表が相手だともっと早く私は落とされるでしょう。それに今まで仲間だと思っていた人を疑うほど悲しいこともありません。同じ国の政府の人も疑いたくはありませんし……
「まあ第2次世界大戦時から発足した組織だって言うしな。各国に工作員やらスパイやらはいると考えた方が妥当か。話は大体分かった。ところで……」
ニコラエワ中佐は回していた葉巻を胸ポケットにしまうと何故か先ほどポケットに入れた錆びだらけのシガーカッターを取り出します。
「あんたたち、嘘はついてないだろうね?」
「何故嘘を言う必要が?」
ニコラエワ中佐の言葉に一瞬場の空気が凍ったような感覚に陥りました。その言葉に詰まった私に対してコールフィールド候補生は変わらず淡々と答えます。
「いや、アメリカさんもそうだったが自国のことになると国の奴らってのはとにかく無口になるものさ。『アラクネ』の強奪然り、軍事IS然り。そしてそれはアメリカだけじゃない。私も、そしてあんたたちもだ。違うか?」
そう言いながらニコラエワ中佐はシガーカッターに指を通します。
「言い忘れたが私が一番嫌いなのは嘘を簡単に吐ける人間でね。嘘って分かるとちょーっとばかし周りが見えなくなるんだ。さて……」
錆びついたシガーカッターが耳に障る音を立てて上下しています。なんでしょう……あの錆びすごい嫌な予感しかしないんですけど……
「今ならまだ勘違いで言い訳できる段階だ。本当に『アラクネ』だったんだな?」
「……!」
ば、ばれています。これは絶対ばれて
「そうですね。『アラクネ』でした」
コールフィールド候補生!?
「そうか。ん? カスト候補生」
「はい?」
「爪が伸びているようだがちゃんと手入れはしているのかな?」
ニコラエワ中佐は私の指先を見ながら微笑みました。その目線に吊られて私は自分の指先を見ます。そこまで伸びているようには見えないのですけど、この人からしたらこれは伸びすぎなんでしょうか?
「丁度いい」
「え? わ!」
至近距離で聞こえた声に顔を上げた瞬間右手の人差し指を掴まれました。
「私はこういうのが放っておけない性質なんだ。ちょっと爪を切らせてくれないか。まあなんだ……深爪したらすまないな!」
「え…………っ!」
あまりの突然の事態に私は絶句するしかありません。ニコラエワ中佐はシガーカッターの間に私の人差し指を通すと肌に食い込むギリギリの位置で止めました。
「ひ……………あっ…………」
あまりの出来事に声が一切出ません。何せもうひと押しすれば私の人差し指は第一関節から先が無くなります。
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