第三十八話
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ん」
いままでより柔らかい表情で全幅の信頼を寄せてくれる彼女のその言葉に、俺はがぜんやる気が上がった。
本来なら海賊風の軽装で戦うはずが、やってくるのがわかったので万全に装備を整える。
浜風での錆びを避けるため、箱に仕舞っておいた鎖帷子の上衣を被り、胸当てと肩鎧、それに腿当てと脛当てを装着する。
煮込んだ固い革を重ねて出来たそれは堅牢でありながら軽く、革ゆえの柔軟性も残っているので武器の取りまわしも体捌きへの負担も比較的自由だ。
投槍を漁師小屋の壁に何本も立て掛け、魚箱をひっくり返したものの裏側に支えを付けて矢除けの盾代わりに漁師小屋の各面に備える。
小屋の外に幾つかある樽には投石用の石も蓄えられ、樽の蓋には金属製の握りが付いており、即席の盾代わりとしてある。
「お頭ー! お逃げください!」
そんな声と共に入り江に着いた端艇から、カンテラを持った若者が漁師小屋へと駆けてきた。
小屋の側と海岸、それに高台へと分散してそれぞれ配置していた見張り2人ずつとで囲んでしまうと、その若者は平伏して敵意が無いことを示し
「もうじき、ドバールとピサールが大軍で攻めて来るんです!はぐれたあと、オレはやつらの様子を探ってました。でも、お頭の、ブリギッド様の居場所が知れ無くて途方に暮れていたんです。でも昼間にここにいるのをお見かけして……」
「お名前を教えていただけませんか? 姉の為に力を尽くしてくださっているようで感謝いたします」
小屋から出てきたエーディンさんは、その後ヴェルリーと名乗るその若者に声をかけた。
「くっそ、マディノの傭兵隊かよ!騙された!」
一瞬で察して悔しがる彼を前にして
「あなたのように姉の近くで働いている人が間違えるくらいですから、わたくしの変装は完璧なようですね。それに、海賊達を殲滅できればあなたのあるじ、わたくしの姉であるブリギッドの安全にも繋がりますよ」
「……確かにそうかも知れません。でも、本当によく似ている」
「それはそうとして、敵の戦力や武装、それに到着想定時間などを教えてはくれませんか?」
俺がしゃがんで、平伏している彼となるべく視線を近づけ、そう告げると
「……マディノの傭兵隊には教えられない、敵対してても元は仲間だ。売れやしない」
「良い心がけです、では行動の制限をかけはしますが、お命を奪いはしません」
俺が彼の両手を縄で縛っていると
「ヴェルリーさんとおっしゃいましたね。わたくしはグランベルはユングヴィの公女エーディンと申します。わたくしには双子の姉がおりまして、そう、五歳のころでありましたか、海賊に連れ去られてしまいましたの……でも身代金の要求も無く、行方も杳として知れないまま今の今まで時が流れてしまいました。ねぇ、ヴェルリーさん、姉は
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