第三十八話
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いる人の気持ちを慮る、そんなお人です。……話は前後してしまいますが、シグルドさまと同じように、エーディンさま、あなたのことが好きで好きで命がけで、そして親族や主家から縁を切られてでもお助けに向かおうとシグルドさまの軍に合流する人が何人もいるんです。言うなればシグルドさまご自身と同じと。
そんな人たちの為に自分は身を引いて行きずりの女性と結婚してしまい、あなた様から呆れられてしまおう、そしてあなたを慕う他の男達にも目を向けてもらおうと……いきずりの女性は結果的にグランベルの王女さまで、それを知るのはずっとずっと先の話になるのですが……」
じっとして思い詰めたような彼女に
「そんなお優しい方だから好きなのでしょう?」
「……ミュアハ王子は、口がうまくてずるいです」
泣きながら笑顔を見せている彼女は渡したハンカチで目元を拭いながらそんなことを口にした。
「それに、先日話したようにわたしのもくろみが上手く行って争いを止めることが出来れば、あなたさまの想いが成就することだって出来るでしょう」
すこし肩を抱いてあげると彼女は俺に安心したかのように身を預けた。
「先程申した事、取り消します」
「むむ? なんでしょう?」
「忘れずに、覚えていてください……」
アゼル!本当にごめん!
今までのエーディンさんは礼儀正しく、すこし固い方であったけれども、この出来ごとがあってからは笑顔を絶やさず、俺をはじめ漁師小屋での待機メンバーになにかと親しく声をかけてくれるようになって皆の士気も上がったような気がしてきた。
夜の見張り交代の時になにやら海側のほうに小さな灯りが一瞬見えて、それから消えた。
そのあとにも何度か灯いては消え、時々は長く灯り続け、しばらく消えていたかと思うとまた灯く……
「あれは海賊や海で暮らす人々の連絡の信号か何かでしょうか?」
……たぶんモールス信号的な何かなんだろうけれど、俺が一緒に見張りをしている仲間に問うてみた。
すると、わかりそうな人間は今休んでいるメンバーのほうに一人だけ居ると言うことですまないが起きてもらい、解読してもらった。
その内容は海賊の一団が迫っているので危険だという知らせだとのことだ。
俺は夜陰に乗じてヴォルツのもとを訪れそのことを告げ、もちろんベオウルフにも町のほうへ連絡に向かってもらった。
漁師小屋に戻りエーディンさんを起こし、町のほうへ避難するよう告げると彼女はそれを断った。
ここは激戦になるだろうから治療の杖が使える者は一人でも多くいたほうがいいし、敵を引き寄せる囮の自分が先んじて敵に矢でも射掛ければ一目散にこちらを目指してくるだろうこと、そして
「士官学校でのお噂通りなら、わたくしを守り通してくださいますこと疑いありませ
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