9 「エリザの思惑」
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ルシーにやるのだろうか、動作が手慣れている。
「ほぉら、近くにいるんでしょ〜? マタタビよ〜、出てらっしゃ〜い」
すると祠の方からバタバタガリガリという音がする。2人は顔を見合わせると、気づかないふりをしてハナの名前を呼び続けた。
「マ、マタタビィっ!」
ズボッとエリザの足元からハナが飛び出してきた。目を白黒させるエリザの手からそれを奪い取り、さっさと逃げようと再び穴に潜ろうとした――が、その尻尾を寸前でエリザに握られる。ビビビビッと尻尾の先から震えた。
「ししし尻尾はににににに握らないでニャッ! 頼むニャ!!」
「じゃあ逃げないって約束なさい」
「するニャ! ごめんなさいニャ!!」
しょんぼりしたハナに慰めの言葉をハーヴェストがかけている間、エリザは肩掛け鞄から木箱を取り出してしっかり蓋がしまっているか確認した。村長から手紙を受け取ったまでは一緒にいたから知っているものの、その箱について知らないリーゼロッテが、エリザに尋ねる。
「なにそれ? 村長の手紙は?」
「この中にちゃあんと入ってますよ。途中で手紙が汚れちゃったりしたらまずいでしょ? うふふ。ま、もう1個仕掛けがあるんだけどねぇ〜」
鼻歌を歌いだしそうな程機嫌が良いエリザに何か危険を感じるが、受け取った箱は特におかしなところもなさそうだった。蓋を開けようとするとエリザが慌てて奪い取る。
「ダ、ダメよ! 開けちゃ!」
「なんで?」
「え? だ、だって…そう。機密書類だから! 開けた形跡があるとマズイじゃない!」
「ああ、そっか。……ん、機密?」
「そうよ! そうなの!」
語尾に力を入れて断定する。ハナに箱を渡す時も、「いい? 絶っっっ対に開けるんじゃないわよ。でもあいつに渡したら『兎に角あけろ』って伝えなさい。いいわね?」と念を入れた。もう嫌な予感しかしない。こうなったエリザを止める術は、1年間喧嘩ばかりしていたリーゼロッテはよく理解していた。断言しよう、無い。
既にエリザが生きるトラウマとなっているハナは、ぶんぶんと首が千切れるほど激しく頷くと、一刻も早くこの場を去りたいと駆け出した。穴を掘ることも忘れている。
それを見たエリザはほくそ笑んだ。
「よし、追いかけるわよ!」
「…エリザ、今のもしかして計算のうちだったんじゃ……」
「人聞き悪いこと言わないの。このあたしの澄み切った目を見て! そんなこと考えるように見える?」
「全力で言ってるようにしか見えません」
言いつつも背中をエリザに押されてとりあえずハナの後を追いかけると、エリア8の洞窟に続く洞穴の入口よりちょっと右に、獣道があった。といっても、本当に僅かに道になっている程度のものだから、すぐ近くまで行ってしげしげと調べないと分からないよ
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