投刃と少女
とあるβテスター、参戦する
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「……、ナイスファイト、だ……」
「えへ、ありがと〜!」
「あ、あはは……」
明らかにドン引きしている素振りを見せつつも、形だけでも賛辞を送るD隊リーダー。
大の男が引いてしまうほどのコボルド殺害現場を見せ付けた少女は、そんな相手の心情を理解していないのか、投げかけられた言葉に素直に喜びを表している。
そんな相方の様子を見て、ユノが乾いた笑いを浮かべているのが印象的だった。
……余談だが、後にこの時のD隊リーダーであった男はこう語っている。
『あの時は正直、コボルドよりも彼女のほうが恐ろしかった。あの場で下手なことを言えば、今頃飛んでいたのは俺の首だっただろう』と……。
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その後、アスナとシェイリのツートップによる善戦《大量虐殺》によって、その場に湧いたセンチネルは一匹残らず葬り去られた。
『えへ、ボス戦って楽しいね〜!』『呑気なこと言ってる場合じゃないで……しょっ!9匹目っ!』『すごーい!あっちゃんかっこいー!』『誰があっちゃんよっ!!』などといった遣り取りはあったものの、俺達は与えられた役割をまっとうしていた。
といっても、俺とユノはほとんど何もしていないわけだが……。
「なんか俺達、やることないな……」
「うん、僕もそう思ってた」
俺がポツリと呟くと、隣に立っていたユノが苦笑いを含んだ声で同意した。
シェイリと相方であるこの少年は、あの戦いぶりを毎日見せ付けられているのだろう。
なんというか、おまえも苦労人だな……。
まあ、何はともあれ。
これで今湧いていた取り巻きは全て倒したことだし、あとは残る三匹を倒し、ボスのHPを削り切れば……初のボス攻略戦は、俺達の勝利で終わる。
───今のところはベータの時と何も変わらない、か……。
昨日の会議でシェイリが口にした、ボスの強さがベータテストの時とは変わっているのではないかという可能性。
だが。今のところ、取り巻き含む亜人達にはベータとの差異は見当たらなかった。
今、ボスのHPは三本目のゲージが残り僅かといったところだ。あと一分ほども経てば、最後の一本に突入するだろう。
その時、コボルド王は武器を腰に差した湾刀《タルワール》に持ち替え、後は死ぬまで曲刀スキルを使い続ける───はずだ。本当に何の変更もなければ、だが。
───頼む、このまま……このまま行かせてくれ。
ソロで戦っている時はまるでしないことだが、俺は全身全霊で何者かにそう祈った。
このまま何事もなく終わってくれ。そうすれば……一人の死者も出さずに第1層を突破できたと知れば、絶望していた他のプレイヤー達だって───
「アテが外れたんやろ。ええ気味や」
と、俺が思っていた瞬間。
俺達の背後から、耳障りな濁声がひそっと響
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