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『もしも門が1941年の大日本帝国に開いたら……』
第十九話
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千発も輸送しなくてはならんのにこれ以上文句を言われたらどうしようもないぞ」
参謀の一人はそう呟いた。特地へ派遣する際に、派遣部隊の各砲は二千発ずつ用意をしていた。しかし、帝国軍と連合諸王国軍との戦闘で各砲は三百発くらいまでに減少しており、内地で砲弾の増産が急がれていた。
今は漸く各砲千発くらいまでに戻っているが大軍で攻められたら持ち堪えられるか微妙であった。そんな時に声をかけたのが海軍であった。
旧式であった四〇口径三年式八サンチ高角砲や四五口径十年式十二サンチ高角砲とその砲弾を提供すると言ってきたのだ。
この言葉に陸軍省は歓喜の声をあげていた。一方の海軍では……。
「海軍が活躍しているのは陸戦隊と航空部隊しかいないんだ。これで予算なんぞ減らされたら対米戦は戦えない」とそういう意図もあったりする。
実際に陸軍は大陸から撤退した師団を解体して兵士を退役させたりして資金を兵器の増産や開発に充てていた。退役した兵士も職場に復帰したりして産業兵士として活躍していた。
この軍縮は宇垣軍縮の再来とまで言われており、実に十個師団が解体されていた。
このように内地の人間が血を吐くような想いは実り、後の炎龍討伐に海軍の高角砲も活躍する出来事もあった。
そして翌日、樹達一行は銀座に戻っていて、ロゥリィ達は銀座事件で犠牲になった人々に対して献花をして黙祷をしていた。
「伊丹少佐殿。梨紗さんから手紙が届いておりますよ」
少尉の階級章を付けた尉官が伊丹に手紙を渡す。
『梨紗さん?』
尉官の言葉に伊丹以外の人間が目を見開いて伊丹を見た。
「ん? あぁ俺の幼馴染みだ」
伊丹はそう言って深くは語らなかった。
「(実家が仕立て屋だから自分で洋服を作って着ているなんて言ったら隣組とかが五月蝿いからなぁ。それに一応は俺の嫁だからまたこいつらが五月蝿くなるし)」
伊丹はそう思っていた。なにせ梨紗は自分で洋服を作っては人に着せたりをしていて隣組から目を付けられていたりする。そして伊丹は梨紗と結婚している。
親も親で梨紗のする事は聞いていながらもそのままにしていた。要するに親でも手に追えないからであり、仕立て屋として梨紗がする事は修行と考えていたのだ。
そんな事を思っていた伊丹とは裏腹に樹達は梨紗とは何者なのかを考えていたりする。
「(……何となく少佐と同類な気がするな……)」
妙に勘がいい樹である。
そうした少しのいざこざはあったが樹達は無事に特地へと帰還したのであった。
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