第七章 銀の降臨祭
第三話 銀の降臨祭
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却するぞ」
全軍の退却だった。
『反乱軍』とアルビオン軍に追われ、敗走する連合軍は、ロサイスへと続く街道を疲れきった顔で歩いていく。不安を紛らわせるように、敗走する連合軍の兵士は、様々な憶測を口にしながら歩いている。早く安全な場所へ、生き残りたいと急く兵士たちだが、その歩みは遅い。
街道の上を、長く細く伸びる連合軍の中に、ルイズと士郎の姿があった。
士郎は、隣りを歩くルイズに気遣わしげな目を向けると、懐から紙袋を取り出す。
「ルイズ食べるか?」
「え?」
ルイズは足を止めず、士郎に顔を向ける。
士郎は紙袋の中から取り出した丸い飴玉を、ポカンと口を開けているルイズの口の中に放り込む。
「んむっ? あ、甘い……」
「朝から何も食べていないだろ。甘いものは心を落ち着かせるからな」
「シロウ……ありがと」
口をもごもごとしながら、こくんと頷いたルイズにふっと笑みを向けた士郎は後ろを振り向く。そこには、スカロンやジェシカ等、『魅惑の妖精』亭の女の子たちの姿があった。皆、疲れた顔をしている。
「スカロン店長」
士郎はスカロンの名を呼び、手に持った飴入りの紙袋を投げる。スカロンは飛んできた紙袋を受け取ると、戸惑いの顔を向けてくる。
「俺特製の飴だ。味も栄養も保証する。皆に配ってくれ」
「……ありがとね」
スカロンが何時もと違う弱々しい笑みを向けると、士郎から渡された雨を、店の女の子たちに配っていく。女の子たちも朝から何も食べていないのか、渡された飴をすぐに食べ始めた。口の中で飴を転がし、顔に浮かぶ辛そうな表情を、ほんの少し綻ばせるのを見た士郎も、同じように顔を綻ばせる。
士郎が『反乱』に気づいたのは、連合軍の中で一番早かった。士郎はシティオブサウスゴーダにいる間は、ほんの僅かな仮眠以外の時間を、街を一望出来る場所で警戒を行っていたのだ。そのため、不審な動きをする兵士の姿に一早く気付くことが出来たのだった。宿屋を爆破しようとする者たちを、何組か止めることは出来たが、士郎一人で全てを止めることなど出来るはずはなく。退却命令が出てからは、ルイズを伴って慰問隊の元に駆けつけ、何が起こっているか分からず混乱する皆を連れ逃げ出した。
ルイズが隣で、コロコロと飴玉を口の中で転がす音を聞きながら、士郎は『反乱軍』を止めた時のことを思い出す。
まるで魂が抜かれたかのような呆けた顔で動く『反乱軍』を一目見て、士郎は彼らが正気ではないことがわかった。
魔法か何かで操られている可能性が高いが、確証はない。
試すような時間がなかったため、自分の持つ手札でこれを解決出来るかどうかも分からない。
様々な考えが頭に浮かぶが、一番頭
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