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剣の丘に花は咲く 
第七章 銀の降臨祭
第三話 銀の降臨祭
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の頂点に立つ男が暮らす場所であった。
 その男、ガリア王ジョゼフは、ガリア王家の一族特有の青みがかった髪と髭を持つ、人目を引く美貌を持つ者である。今年で四十五になるにも関わらず、その肉体には些かも衰えは見えない。それどころか、高い身長と、若々しい美貌、そして均整の取れた鍛えられた身体は、どう見ても三十程度にしか見えない程だ。
 そのジョゼフは今、部屋を占領するかのように設置された。差し渡し十メイルにもなる巨大な箱庭の前で、青みがかった美髯を撫でている。視線は箱庭の中。箱庭の中は、ハルケギニアの地図を模した巨大模型となっていた。
 部屋の中には、ジョゼフの他に、身の回りの世話をする小姓の姿以外はない。ほんの少し前には、もう一人女性の姿がそこにはあったが、先程悲鳴を上げながらこの部屋から逃げていったのだ。愛人から向けられた怯えるような視線や悲鳴に、ジョゼフは何の反応も見せなかった。ただ、五月蝿そうに眉根を寄せたのが、反応らしい反応だった。

 既に命令は発した。
 予想どうりにいけば、あと数日で連合軍とアルビオンの両方を片付けられる。
 ならばこの箱庭には、もう用はない筈なのだが、ジョゼフは何故かその場から動かない。

 理由は……ある。

「……ガンダールヴ」

 トリステインにいる虚無の使い手の使い魔であるガンダールヴ。
 自分と同じく、魔法が使えず落ちこぼれと呼ばれていた使い手が、使い魔召喚で呼び出した男。報告では、現れた時既に瀕死の状態であったという。常に赤い甲冑と外套に身をつつみ、剣を持って戦うと……。
 分かっていることはそれだけ。
 あの男について調べさせたが、欠片も情報は集まらない。
 最初は自分の使い魔と同じく、ロバ・アル・カリイエから来たのではと思ったが、シェフィールドにはまるで覚えがないという。ただ、シェフィールドが知らないだけかもしれないが……。
 ……そうではないと、何故か確信がある。



 伝説に唄われるガンダールヴは、千の軍勢を壊滅させたと唄われるが……伝説とは尾ひれが付くものだ。実際どうかは疑わしかったが……。

「……あながち嘘ではなかったのか?」

 報告では、幻影と共に現れた赤い騎士が、亜人を倒して回っていたと言っていたが。それが真実ならば、その力はまさに伝説に唄われるものそのものだ。
 だが、例えガンダールヴが真実一騎当千だとしても、奴にこの戦争の結果を変えられる筈が、

「……しかし……」

 ないはずなのに……何かが引っかかる。
 いや……違う……予感がするのだ。

「……貴様は一体……何者なのだ……」

 一際強い風が吹き込み、窓の外から大量の白い粒が入り込む。
 箱庭の上に落ちたその白い粒が、丸い城壁の都市を模した模型に覆い隠し……白銀に染
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