第七章 銀の降臨祭
第三話 銀の降臨祭
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魔じゃない」
「ただの使い魔じゃなければ、何だと言うんだ」
顔は動かさず、士郎は視線だけを横にいるジュリオに向けた。
「……それが分からないから聞いているんです」
士郎から向けられる視線に、ジュリオは悔しげに口を噛み締める。
「そんなことを言われてもな。まあ、確かに人間の使い魔は珍しいそうだが」
「……ええ、確かに珍しいですね。ですが、ぼくがあなたのことをただの使い魔じゃないと言った理由はそれじゃないんですよ」
「なら何だと言うんだ?」
ジュリオを見つめる視線の中に、一瞬鋭い光が宿る。
そのことに気付いたのか分からないが、ジュリオは士郎の視線に負けないように目に力を込めた。
「……百を超える亜人を斬り殺すような男が、ただの使い魔な筈あるわけないじゃないですか」
「…………」
ジュリオの言葉に、士郎は無言で答える。
何も口を開かない士郎に向ける視線を更に強め、ジュリオは言葉を続けた。
「亜人一体で、手練の戦士五人に匹敵すると言います。つまりあなたは、少なくとも五百人の手練の戦士を倒したということになりますね」
「良く知っているな」
「亜人についてですか? それはですね、ロマリアには研究熱心な神官が色々いまして、その中の一人から聞いたん――」
肩を竦め、得意気に士郎の言葉に答えようとしたジュリオだったが、斬りつけるような鋭い声が、それを遮った。
「違う。俺が言っているのは、俺が亜人を斬ったということだ。あれは、第二竜騎士隊とルイズがやったことになっている……知っているのは、ルイズぐらいだ。お前は俺が亜人を斬ったことを、どうやって知った」
この時初めて士郎の顔が、ジュリオに向けられた。
先程までとは比較にならない、鋭い視線と気迫に圧されるように、一歩後ろに後ずさる。
「それは……」
「俺の方こそ聞きたい……お前は何者だ」
後ずさるジュリオを、追うようなことは士郎はしなかった。ただ、その鷹の様な眼光でジュリオを睨みつけるだけ。何度か口を開こうとしたジュリオだったが、士郎の眼光に抑え込まれるように声は出てこなかった。
「…………」
押し黙るジュリオから顔を逸らした士郎は、身体に触れた冷たい感触に顔を上げた。
「……雪か……道理で冷えると思った」
月光と星光、そして時折咲く火の華に照らされ白銀に輝くそれを見上げながら、士郎は小さく呟いた。
「さながら……銀の降臨祭と言ったところか」
ガリア王国の首都リュティスにある、巨大な宮殿であるヴェルサルテイル。様々な意匠の建物が立ち並ぶそこにある、一際大きな建物であるグラン・トロワと呼ばれる青いその宮殿の奥の部屋が、この国
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