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東方調酒録
第六夜 星熊勇儀は勝負が好き
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るほど暴君である。悠は考える。力では全く相手にならない。弾幕勝負は遠慮したい。飲み比べは……おそらく勝てないだろう、それに営業中である。だとしたら……。 悠は棚の横にある箱から黒いプラスチックのコップとサイコロを三つ取りだした。
「この三つサイコロを振って上を向いた目の合計が四以上なら、勇儀さんの勝ち。 三以下なら僕の勝ち。 それでいいですか? 」
悠がサイコロとコップをカウンターに置いた。勇儀がサイコロを持ち上げて確認した。
「それでは、 あんたは三が出ないと負けじゃない? そんな条件でいいのか? 」
勇儀が楽しそうに聞いた。
「はい、 その代わりサイコロは僕が振る」
「いいわ」
そう言って、勇儀は悠にサイコロを渡した。
 悠はサイコロを受け取り、二つの指に三つのサイコロを挟んで持った。それをコップの内側の壁を滑るように投げいれ、遠心力でサイコロが落ちないように半周させながら机に被せた。勇儀がコップを見つめている。後ろの三人も首をのばしてコップを見ようとしていた。
「それじゃ、 持ち上げてください」
悠にそう言われて、勇儀がコップを持ち上げた。するとコップの中のサイコロは三つ重なっていた。そして一番上のサイコロの目は赤い点であった。後ろの三人がおおっと静かに驚いていた。
「出目は一ですよ」
「へ理屈だな」
勇儀は不満そうに一番上のサイコロを退かした。下にあった二個目のサイコロの出目も一であった。そして一番下の出目も一であった。
「全部合わせても三です」
「アハハ、 すごいじゃないか」
勇儀が大笑いしながら、悠の肩を叩いた。力を加減したつもりであると思うがとても痛かった。悠が肩をおさえている。
「あっと、 すまん。 私の負けだよ」
勇儀が気持ちよく負けを認めた。
「これは、 何回でもできるのか?」
「三つ重ねるだけなら十回中十回できます。 全部一を出すのは一回できればいいほうですよ」
「その一回を成功させたわけかい、 そうだ、 勝った褒美になんでも言うこと聞いてやるぞ」
勇儀のその言葉に悠はドキッとした。後ろの三人が何か期待しているようであった。
「そうですね、 でしたらまた来店してください」
勇儀はハハっと笑って、「もちろん」と答えた。後ろの三人はええ!と不満そうにざわざわしていたが勇儀の一睨みに下を向いてしまった。悠はなぜこの三人が勇儀をこれほど恐れているのかは知らなかった。

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