第三十七話
[1/4]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
襲ってくるなら洋上というのがお決まりパターンだったようで、実際、海賊達がブラギの塔がある島にまで上陸してきたというケースはほとんど無いそうだ。
そこまでやってしまうとアグストリアから大規模な海賊討伐の軍が編成されてしまい徹底的に海賊狩りが行われてしまったという過去の教訓からなのだろう。
そんな禁忌を犯してまでこの蛮行が行われたのは、それだけブリギッドが彼らの怒りを買う何かをやってしまったのか、あるいはリスクを超える大きな利益があるからなのか、それとも、討伐の軍が派遣されないという保障なり密約なりを得ているのか……。
捕らえた海賊から詳しく尋問するのは後からにして、俺たちは港へと向かった。
港のジャコバン達と合流すると彼らも苦戦していたようだ。
彼らは島に駐留していた兵士らと共闘し海賊船3隻を退けはしたものの傷を負った者、武運がわずかばかり足りずに永遠の旅に出た者、疲れ果てその場に蹲る者……。
「姐さん、すみませんこっちは防戦で手一杯で」
「何言ってんだい、一人寄越してくれたんでこっちもなんとかなったんだ。それより早く治療してもらいな」
ジャコバンは片腕をぶらぶらさせ、歩けば跛行するほどの状態だったが強力な癒し手による治療の杖の恩恵を受けたので、しばらく安静にすれば元通りに動けるようになるだろう。
これが凡庸な癒し手による治療であるならば長い療養が必要になる、さすがはクロード神父と言ったところか。
レイミアは守備隊の主だった人達と話し合ったり書類のやりとりをしていたが、マディノへの引き上げの許可を受け、亡くなった人々の遺体を輸送することも請け負ったようだ。
本来ならこんな事態があったからには数日は足止めを受けてもおかしくは無いが、アグストリア本国への報告や増援、あるいは欠員補充の要請など急を要するということもあり、夕暮れ近くには再びマディノへと出港した。
俺も何か手伝いたかったが、船酔いのため何もしないですみっこでおとなしくしているほうがマシだろうと船べりで水を飲んでは吐いていた。
マディノへと戻った頃にはもう日が暮れて2時間以上が過ぎていた。
港にはわずかな明かりが見える程度だったので、まずは端艇で先触れの人員を送り、かがり火を盛大に焚いてもらい慎重に港へと接舷するのを目にすることになった。
地上の人になってからの俺は荷運びや遺体の搬送などを手伝い、船上での汚名を少しでも雪ごうとしたがどれほど役に立ったかは定かでは無い……。
レイミアはずっと大忙しで多くの人に指示を出し、港町の役場と港を何回も往復していた。
おそらくは島での出来ごとの報告、被害者の遺族への対応や明日以降になるであろう葬儀の手配、捕虜となった海賊への本格的な尋問など、やることは山積みなのだ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ