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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第三十五話 千客万来・桜契社(下)
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な感じだったか――と失礼極まりない事を思いながら豊久は
「それに、あの負け犬大将もお前と彼の関係を知っていたわけじゃない。ただ単純にお前と駒州重臣団の不和を煽っているだけだ」
 ――だからこそ守原定康は俺を誘ったのだろう。
「それに、佐脇さんだって結構な将校だ。自分の部下を無碍に扱う人じゃないさ。
向こうの意図は兎も角とすれば、大隊にとっては悪い人事じゃないだろう?」

「・・・・・・」
 それでもなおむっつりと黙り込んでいる新城に豊久はため息をついた。
「――近衛に兵たちを移す準備はもう済ませてある――まぁ、俺も最後の中隊に残った将校連中をもらうし、他にも数名程度、剣虎兵学校に下士官を送る事は決まっているから何もかもというわけにはいかないが。残りの内、一個小隊程は好きにしろ、百人は残っている。」

「あぁ――ありがとう。」
「お前が――ありがとう?おいおい、俺に礼を言うなんて重症だな。」
 と豊久がわざとらしく戯けて両手を上げるとさすがに新城も笑みを浮かべた。
「おい、俺をなんだと思っている」

「冗談だよ、冗談――お前も大隊長ぶるようになったな」

「これでも貴様が大隊の指揮を執っていた時期よりもながく代理の仕事を押し付けられていたからな」

「成程な――そりゃそうか、次は聯隊か。剣虎兵を中心とした事実上の独立聯隊――軍事史上初だろうな」
「貴様も大規模聯隊の長だ」
 新城の言葉に豊久もわずかに苦味の混じった顔で首肯する。
「そうだな――俺は元々、常備の大隊を統合するようなものだ。
おそらく夏には始まるだろう防衛戦にも投入されるだろうな、気が重いよ」
「俺も可能な限り間に合わせるつもりだ。長く皇都にいても碌なことにならないのは目に見えている」

「だろうね。殿下はお前を護るだろうが、父上たちはそれにかまけていられない――悪いがね」
 馬堂家は非常に多忙である。豊長も豊守も駒城の方針に従いながらも同時に馬堂家独自の政策・政略を執り、内務省の駒城派・弓月派を取りこみ、更に西原家、及び安東家の一部とも協調関係を独自に結ぶべく四苦八苦している。
「だが――近衛衆兵で新規兵科の新編部隊を三か月少々で戦力化というのも随分と無茶だな」
「考えはあるのだが――陸軍からも随分と引っこ抜かなくてはならんからな。
閣下の威光を借りる事になるだろうな」
 平然と言ってのけた新城に豊久が声を上げて笑った。
「成程、成程。そしてまさしくお前のやり方でお前の大隊になるわけだ!
――せめてもう少し時間があれば良いのだが、あまりに早く時間がながれてゆく。北領ではあれ程に時間が早く流れるように祈っていたのに」
 そういいながら、三カ月と云う数字自体もあまりに楽天的ではないか、と
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