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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第三十五話 千客万来・桜契社(下)
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の平々凡々な陪臣中佐は軽く両掌を見せて降参するしかなかった。


同日 午後第四刻半 桜契社大会堂
〈皇国〉近衛少佐 新城直衛

 ――あの馬鹿の減らず口は矢張り死んでも治らないだろうな。
 新城直衛は苦笑を噛み殺して二人の少将の攻撃を柳に風、と受け流し涼しい顔をして水を飲んでいる不逞の旧友から視線を外すと衆兵隊司令が此方を見て言った。
「さて、期待の新城少佐には俺の下で大隊を率いてもらう。」
「剣虎兵ですか?」
 新城も気になって調べていたが豊久が言った通り、剣虎兵部隊はやはり存在していなかった。
「あぁ、そうだ。事務処理上は――何と言ったか、強襲専門の――」
「鉄虎兵ですか?」
「それだ。その鉄虎兵大隊として新編する。装備・人員は可能な限り充当する。定数を千五百名以下である限りは好きに要求して宜しい」
実仁の言葉に新城は珍しく僅かに鼻白んだ。
「それでは聯隊規模になってしまいますが」
 第十一大隊でも定数を完全に充足して九百名弱だ。独立大隊と言えども異例にすぎる。
「近衛と陸軍は違う」
 少し言葉をきり、実仁少将は口元を歪ませた。
「まぁ取り敢えず駒城の面々に感謝しておけ、それと陸軍局を説得して回った官房の官僚にもな」
 新城が視線を向けると篤胤は鼻で笑う様な素振りで応じ保胤は鷹揚に頷く。豊守は豊久とぼそぼそと囁き合っている。
――好きにやらせてもらうが。
「部隊番号は第五〇〇番代を割り振る、何が良い?」
「空いている最初の番号で構いません。」
「ならば貴様の部隊は近衛衆兵鉄虎第五〇一大隊だ。当然だが、衆兵隊司令部直轄となる。いいか、近衛に居る限りは俺が直接面倒を見てやる」
 ――その代わりに成果を出せ。
そう言外に滲ませながら実仁は新城を見据える。
 ――近衛衆兵鉄虎第五○一大隊、か。悪くない、寧ろ良い。確かに新編と言うのは少々面倒だが、好きに造れる事が出来ると言う事だ。近衛衆兵である事を考慮に入れるのならばけして悪い条件では無い。下士官・士官を古兵で固めればどうにでもなる。

 素早く大隊の組み立て方を脳裏で検討し始めながら新城は皇族の視線を真正面から受け止めた。
「はい、閣下」
 ――何より大隊はそれも剣虎兵大隊はとても愉しい(・・・・・・)任務だ。
 自然と笑みが浮かぶ。気の持ち方の所為か、自然と空気が柔らかくなったように感じた。
 ――皇族、実仁親王としての政治的な意味、これから守原共がどう動くか。そんな面倒さえ関わらなければ――あぁ、そうだ。けして悪くない。五○一大隊か!



同日 午後第五刻半 桜契社 大会堂
〈皇国〉水軍中佐 笹嶋定信

「――あぁその通りだ。工廠の増設自体は陸水ともに最優先で
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