とらうま
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「終わったよ、なのは」
淡々と事務的な声が聞こえる。
「うん。有難う、フェイトちゃん、ユーノ君」
私が真っ二つにされた姿を映し出す、ユーノ君の幻術魔法が解除される。それと同時に私の姿を隠していた魔法も解除される。
若干魔法酔いした気があるなか、フェイトちゃんが私の方に歩み寄ってきた。話の内容は大体察しがつく。
「約束通り、今回のジュエルシードは私が貰っていく」
ああ、やっぱり。
「うん。良いよ」
これは要求ではなく、ただの確認だ。
確認が終わった後、彼女は少し明るみ始めた空の向こうに消えていった。
「なのは……」
フェイトちゃんが居なくなって暫くたった後、後ろから声がかかった。フェレットの姿をした魔導師、ユーノ君だ。
「僕たちも帰ろう。少し気温が低いからさ……」
確かに、4月の朝にしては肌寒い。
「そうだね。行こうか」
私の肩にユーノ君の体重が感じられた。しっかり掴まった事を確認すると、私も海鳴の空に舞い上がった。朱色の空が網膜を通り、脳を刺激する。
「あの時も、こんな空だったね……」
「え?ごめん、何か言った?」
違う。首を横に振る。
ただの独り言だ。誰に聞かれる必要は無い。
そう、ただの独り言なのだから。
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2週間前
「将来成りたいものか……」
自分の部屋で物思いに耽る。時間は夜の10時。そろそろ寝る時間だ。事実、さっきから瞼が重い。しかし、そんな睡魔と裏腹に私の脳は未だ活動中だった。
切っ掛けは割りと些細な物だ。今日の学校の授業で先生に訊かれたからだ。
「皆さんが将来成りたいものは何ですか?」
友達のアリサちゃんやすずかちゃん、他の皆も色々な夢を持っていた。花屋さんだとかエンジニアとか。まぁ、流石にヒモという答えはどうかと思ったけど。
しかし、周囲とは違って私は答える事が出来なかった。
――私が成りたいもの――
決まっていない、というより解らなかった。自分が何をしたいのか。先生は人それぞれだから焦って決める必要は無いと言ってくれたけど、それが喉に刺さった魚の骨の様に気になった。
アリサちゃんに相談してみたら、しっかり笑われた後「なのはが一番好きなモノを考えればいいんじゃない?」と答えてくれた。
――大丈夫。だって、なのはちゃんはとっても強いから――
「にゃはは……」
すずかちゃんの言葉が蘇った。
そうなのかな?私は余り強くない。体育の成績も下から数えた方が早い。というか、常にゆみちゃんと熾烈な最下位争いを繰り広げている……
「なのは、未だ起きているのか?」
不意に扉越しにお兄ちゃんの声が聞こえた。
「あ、もう寝るところだよ」
急いでベッドに潜り込む。
「余り夜更かしするなよ。新学期早々遅刻なんて――」
「な、なのは寝坊なんかしないよ!」
「俺は一言も
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