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こうもり
8部分:第一幕その八
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てだ。
「行きましょう」
「あの」 
 奥方は所長に声をかける。それは夫ではないと言おうとした。
 しかしそれを当のアルフレートが拒む。彼は言う。
「所長」
「何でしょうか」
「では行きますか」
「はい、もう車は用意してありますので」
「それは用意がいい」
「いえ、当然のことです」
 所長は述べる。
「伯爵ともあろう方に失礼があってはなりませんから」
「成程」
「では」
 二人は行こうとする。奥方はそれを見てまた呟く。
「困ったことになったわ」
「何故ですか?」
 アデーレがそれに尋ねる。
「だってあの人がもう行ってるのに。監獄に」
「そういえばそうでしたね」
(けれど)
 アデーレは答えながら心の中で呟いた。
(燕尾服では行かないわよね、どう考えても。じゃあ)
 ここでピンときた。何故急に機嫌がよくなったのかも。それで心の中でまた呟くのであった。
(成程ね。入所前に)
 これでわかった。だが奥方には言わない。
(まあ何とかなるわね)
 無責任だが彼女にはそこまで考える義理はなかったのだ。だからこう結論付けたのであった。そのうえで話を見守ることにした。

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