帰省
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今日。新幹線と電車とバスを乗り継いで、故郷であるこの街へと帰ってきた。
私のいた街は都会過ぎて、緑なんてものは緑化運動やヒートアイランドを防止する目的で植えてるものしか見たことはなかったけれど、この街は昔と変わらずに少し寂れた空気が風と流れる地方都市の片隅にある片田舎で、数年ぶりに帰省した私を懐かしく感じさせてくれた。
バスが進み、次に見えた道のりから中ほどのバス停に停車して、老若男女数人が乗ってくる。
その中の一人の青年と目が合うと、その青年は驚いた顔をして此方によって来た。
整えた髪に少し面長な顔、ピシッと決まったスーツのその青年が口を開く。
「まどかじゃないか。こっちに帰ってたのか」
「しんちゃん?」
青年は小学生の頃からの友人である倉田真司という青年だった。
高校を卒業してから会っていなかったけれど、流石に彼の特徴である垂れ目と右の泣きぼくろで彼だとわかり、荷物を膝に上げると、彼に座席の隣を勧めた。
「帰って来るなら連絡してくれよ。みんな集めたのにさ」
「友くんから聞いてるかと思ってた」
友貴と倉田は幼少の頃からの親友であり、半ば兄弟のような存在だ。
だから、どちらかに連絡しておけば必ずそれは両方の耳に入っていたけれど、今回は何も聞いていないらしい。
なんでも、友貴は家業の手伝いで忙しく、倉田も小学校の教員をしているから、なかなか時間が合わないそうだ。
「みんな心配してたんだぜ?」
「うん、友くんに叱られたよ」
例の電話の際に、私が出て行ってしばらくの間、友貴と倉田を中心に友人一同が私の心配をしていたらしく、連絡を一切絶った私には憤りを感じる人もいたらしい。
特に友貴はなんの相談もなしに私が街を出たことに落ち込んで、しばらくは仕事に身が入らなかったらしい。
とても悪いことをしたなあ。と、思う反面、なんでそんなことで落ち込むのかという失礼極まりないことも思う。
「まどか。痩せたな」
「そう?あれから何年も経ってるから、外見くらい変わるよ?」
十年といかないまでもそれなりの年月、会わないで過ごしたのだから当たり前だ。
少なくとも、二十歳を迎える前には背も伸びなくなっていたし、毎日鏡の中の自分とにらめっこしていたのだから、自分では気づかない変化でもあったのかもしれない。
それを思うと真司はだいぶ変わったように思う。昔はこんなにスーツが似合うような好青年ではなかったはずだし、むしろ冬場はジャケットなどで厚着、夏場はタンクトップのみと、結構だらしのない少年だった。
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