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外伝 ドラゴンクエストV 勇者ではないアーベルの冒険
ムッツリさんの最後の戦い 覚醒編
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「これは有名な、あ、くまのぬいぐるみだからね」
斑鳩さんの言葉で全員が沈黙してしまいました。
「アリスちゃん、ゴメン。
待てなくて、会いに来たよ」
「まさか、ムッツリさん・・・」
「俺は、ムッツリではないのだが」
「そんなことより、どうして!」
クリスお姉ちゃんは、目の前のぬいぐるみに近づきます。
「君たちが現れた場所を、町の人から教えて貰ってね。
毎日見張っていたのだよ」
「確かにお前はムッツリではなく、ストーカーだな・・・」
「茂市、お前は黙れ」
深垣さんは、斑鳩さんの口を手で押さえています。
「君たちが現れた時いた場所から、急に黒い入り口が出現したので、入ってみたんだ。
そしたら、2人の声がするのでその方向に向かっていったら、ここについたのだ」
「とりあえず、話は聞いた。
君たちのお姉ちゃん達を助けたいのだろう?」
「はい」
「できるのですか」
「ここで、呪文が使用できるのなら上手くいくはず。
とりあえず、案内してくれ」
私は、熊のぬいぐるみを抱きかかえると、お姉ちゃん達がいる部屋に案内します。
「アリス、私にも抱かせて」
「ダメです。クリスお姉ちゃん」
「私の、あ、くまのぬいぐるみが・・・」
「茂市、お前は帰れ」
「この人達が、君たちのお姉さん達か・・・」
ムッツリさんは、お姉ちゃん達の姿を眺めると、一言発したまま、黙ってしまいました。
「どうしたのですか、ムッツリさん」
「だから、俺はムッツリじゃない」
ムッツリさんの口調は怒っているようですが、熊のぬいぐるみなので、表情は変わりません。
「俺が、この人達を助ける、か。
自分が生きていることを、再び呪いそうだ・・・」
「ムッツリさん・・・」
私は、ムッツリさんの口調が変わったことに気がついて心配そうに、熊のぬいぐるみをなでます。
「どうしたの、お姉ちゃん達を助けてくれないの!」
クリスお姉ちゃんは、ムッツリさんの言葉に不信感を募らせます。
「・・・、大丈夫だ。
昔の事を思い出しただけだ。
助けるよ、君たちには恩があるからね」
「恩?」
私はムッツリさんに尋ねます。
「2人には、食事を作ってくれた。
俺の先祖から伝わる格言には、食事の恩は絶対に忘れるなというものがある。
今こそ、その恩を返そう」
「ムッツリさん、ありがとうございます」
私は、熊のぬいぐるみに向き合いました。
「お礼は、助けてから言って欲しい」
周囲は静寂に包まれました。
「俺の最後の戦いだな」
ムッツリさんは、覚悟を決めた口調で、お姉ちゃん達に向かって呪文を唱えました。
「ザメハ!」
お姉ちゃん達の表情に変化が現れました。
お姉ちゃんたちのからだが、ぎこちなくほんの僅かにです
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