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外伝 ドラゴンクエストV 勇者ではないアーベルの冒険
着ぐるみにまつわる思い出
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「どうしても、着ぐるみを着なければならないのか」
俺はため息をつきながら、着替えをおこなう。
俺がロマリアに行くときは、着ぐるみを身につけることになっている。
ロマリアで王様をやったことから、いろいろ目立つのを避けるためである。
着ぐるみを着た方が目立つと思うのは俺だけか?

「アーベル。どうして着ぐるみが嫌なの?」
テルルは俺の着替えを手伝いながら質問する。
「それはだな、・・・」
俺は久しぶりに、前の世界での出来事を回想していた。



「僕、アプリン!
新岡(にいおか)市のマスコットキャラクターだよ。
エビルアップルじゃないよ」
大きなリンゴをかたどったそれは、小さな鳥の羽を模した両腕を左右に動かしながら、自己紹介を始めた。
「新岡市の特産品である、ふじリンゴと新岡地鶏をモチーフにした愛嬌いっぱいのキャラクターなのだ。
去年のゆるキャラコンテストでは、全国大会決勝には残れなかったけど、来年はがんばるよ♪」
リンゴの形をしたそれは、左右の手の代わりにある羽を上下に動かしながら愛嬌を振りまく。
「おまえは、何を言っているのだ?」
「キャラクターの自己紹介が必要だと思って」
「いやいや、ここにいるみんなは、知っているから」
周囲には今日のイベントに参加している市役所の職員がスタッフとして集まっている。
アプリンを知らないものはいない。
「イベント中はしゃべれないし」
アプリンには、中の人はいないことになっている。
ならばここで、しゃべるしかない。
「誰に向けて、言っているの?」
アプリンが返事をする前に、外のステージからのアナウンスが聞こえる。

「続いては、みんなのアイドル、アプリンの登場です!」
「早くいけ!」
アプリンは、つきそいの女性とともにショッピングモール内にある特設コーナーに移動した。



「お疲れさん。暑かったでしょ?」
アプリンの着ぐるみを脱いだ俺は、付き添い役の後輩の女性から声をかけられた。
「いや、普通の着ぐるみとは違って、空間があるからそれほど暑くはないよ。
まあ、夏なら、別だろうけどね」
俺は笑って返事する。
マスコットキャラクターアプリンは球形であるため、内側の空間がかなりあまっている。


俺は、スタッフTシャツを身につけている。
脱いだ着ぐるみは、別のスタッフが代わりに身につけている。
俺は、額に少し汗をかいておりタオルで拭いているが、においが気になるほどの汗もかいていないから、問題はない。

「それにしても、休みの日に動員なんて大変ね」
「問題ない。
どうせ、独り身だし」
俺は、イベントの開催にあたって、企画した部局とは異なる課であったのだが動員された。
独身で、ゲーム以外特に趣味を持たない俺は、お呼びがかかれば積極的
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