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外伝 ドラゴンクエストV 勇者ではないアーベルの冒険
アリアハンでの事件 前編
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は、揺れた髪に気がつくことなく少女の名前に驚愕の表情を示す。
「キセノン商会の次期当主ですか・・・」

テルルは、男のつぶやきを無視して、先ほどの問いを繰り返す。
「お客様、恐れ入りますが、お名前を確認させてください」
「・・・。失礼、ゲールだ」
「ありがとうございます。
ゲール様ですね。部屋までご案内いたします」
テルルは、優雅に頭を下げると、ゲールを部屋まで案内した。

「ゲール様、本日はどのような商品をお探しでしょうか?」
テルル一人でゲールと対応していた。

このような商談の場合、直接キセノンが対応することが多かった。
変わった商談の場合、当主が対応した方が迅速に対応できることのほかに、新たな商品開発や販売戦略のヒントにつながることが多いと、キセノンが考えているからだ。
実際、キセノン商会が一代でここまで、規模が拡大した理由はここにあった。

そして、今日はキセノンは別の商談のためレーベの村にいた。
キセノンは一人娘に対して同様の経験を身につけさせるため、自分が不在の場合の対応を任せていた。

テルルは旅にでるまで、責任のある立場で商談を任されたことはなかった。
しかし、代理を任されてからのテルルの対応で大きな問題が発生したことはなかった。

一つ目は、自分の権限と責任がどこまであるか十分把握していたことによる。
キセノンは、テルルに仕事を任せるに当たって、きちんと役割と権限そして責任を明確に説明したからだ。
そして、仕事について不明な点はきちんと納得がいくまで議論しているからだ。
テルルの納得がいかない場合は、キセノンが対応することになるが。

二つ目は、子どもの時の経験による。
テルルは子どもの頃から、キセノン商会に顔を出していた。
これは、幼なじみが店に入り浸っていたことによるものだった。
幼なじみは、子どもには不釣り合いな対応をしており、「キセノン商会の秘蔵っ子」とも噂されていた。
テルルが幼なじみと一緒にいたときの経験は、今の仕事に息づいていた。

「ゲール様、今日はどのような商品をご所望ですか?」
「棺桶に用いられた技術を基にして、商品を製作してほしいのですが」
「棺桶ですか?」
テルルは、ゲールの提案に驚いていた。


「棺桶」は、死亡した冒険者の蘇生率を高める為に考案されたアイテムである。

命を落とした冒険者が教会で復活できるためには、できるだけ遺体に欠損部分が無いことが望まれる。
とはいえ、戦闘行為で欠損部分が発生しないということなどあり得ない。

そのため、遺体の保存を目的に、棺桶の開発が始まった。
最初は、大きく重く、運搬にも問題が生じたことから実用化にはほど遠いものであった。

開発が前進するきっかけとなったのが、魔法の解析と命の
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