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目の前の壁
ひばな

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希望に満ち溢れる春の季節、最悪の禍が海鳴の町に降り注いだ。それらはただ美しく、それ故歪に町を侵食していった。
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朝の3時、目を覚ました。
厭な夢を見た。壊れて逝く、小さなモノ達。
そっと肩を抱く。
――行こうか、レイジングハート――
白い光が部屋を満たした。
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日が未だ上らぬ公園に、一人の少女が降り立った。白を基調としたドレスの様な服を纏い、手には杖の様な物を携えている。
現れたのは、白の魔導師「高町なのは」。魔導師ランクは規格外のAAAランクにして、僅か2週間で七個のジュエルシードを回収した天賦の才を持つ少女。
「いくよ、レイジングハート」
“Alright”
短いやり取りの後、なのはは杖を構えた――瞬間、回りの空間が歪んだ。いや、そうとしか感じられなかった。只でさえ高密度な魔力が更に圧縮されていく。その魔力に気付いてか、いや怯えてか、木を媒介に姿を変えたジュエルシードが姿を現した。
なのはの背後に。
気付いて無いのか、なのはは未だに魔力圧縮にかかりっきりだ。ニヤリと、表情の無い木が笑った様に見えた。
次の瞬間、木が後ろからなのはを斬りつけた。
それは少女の柔肌を切り裂き、彼女の胴体を真っ二つにした。一瞬、有り得ない物を見たかの様になのはの顔が驚愕に彩られる。そして彼女の体は、地に落ちた。
しかし次の瞬間、今度は木の胴体が真っ二つにされていた。魔物は振り返る。一体、自分を斬ったのは誰だと言わんばかりに。その瞳に何が映っただろうか。自分を切り裂いた者の姿か?或いは、
金色の死神ではなかったか?
しかし、幾ら考えても全ては事後のこと。意味が無い。それはただ消える様に燃えていった。
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