カルテ作り(一)
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さらないでいただきたい。ではまたいつか、こうした境を抜きにお会いしましょう、閣下」
言い終えたのちに訪れた数秒の沈黙の後、アルブレヒトが敬礼する。すると画面は完全に切れた。完全に、音も聞こえなくなった。
目の前にあるTV電話が切れた事を確認すると、アルブレヒトはある疑問を覚えた。最後に何故、自分は電話の相手を“閣下”などと呼んだのだろうか。自然と出てしまった言葉だった。もしかするとこれは、エーレンベルク軍務尚書などと敵対する人物からの告発かもしれない。それに相手が貴族や将官、高官であるという保証はどこにもないではないか。自分でもわからなかった。
これは、自分だけで調べられることだろうか。オーベルシュタイン中佐の力を借りれば何とかなるだろう。だがこれは軍務尚書が知っておくべきだろうか。それなら間違いなく憲兵隊の捜査が必要になる。だが現在の帝国軍首脳部が知ったらどのような対応をとるだろうか。そして、これは単に一部の世界の問題だけで済むのだろうか。
アルブレヒトの頭の中には、逆説を伴った思考が幾つも駆け巡っていた。窓の外には風の中を舞った木の葉がへばり付いていた。
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