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形而下の神々
ナツキ・エンドーと白い女神
天才傭兵グランシェ
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―フランス・パリ─

 ナツキ・エンドー。

 その日、俺は一人の女性を探していた。

 本当はドナウ河の流域を俺の相棒と二人で発掘調査したかったのだが、先日、急遽パリに来る事になったのだ。

 それはある一本の電話から始まった。



―5日前―

 研究室で優秀な生徒の論文を読んでいると、いきなり内線が鳴った。

『ミスタータイチ、お電話です。友人のグランシェだと言えばわかるとおっしゃっております』
「あぁ、代わってくれ」

 内線を受け取ると、聞き覚えのある陽気な声が奥から響く。

『ハロータイチ!! お久しぶりだね〜』
「エラくまたテンションが高いなぁ、良い事でもあったか?」

 電話の主はグランシェといって、こいつは俺の唯一の親友と言っても良い存在だ。

『なぁに、俺にとっては無関係な事だがね、友人のタイチ様には実に良い知らせだ』
「ほぉ、現地で遺跡でも見付けたか?」

 彼にはよく俺の遺跡発掘なんかを手伝ってもらっている。おかげでヤツ自身も遺跡やらに興味を持ち始めていてそこらの生徒よりは知識も豊富だし、なんというか、第六感的なモノが優れているので「何となく散歩していたら遺跡を見つけちゃった」的な事もありかねない様な奴なのだ。

『いんや、遺跡じゃあねぇな』

 しかし、そんな俺の他人任せな希望はさっそく打ち砕かれた。

「じゃあ何だ? たしか今はスロバキアとチェコの国境で戦争中じゃないのか?」
『あぁ、その仕事は終わったさ。今回の紛争は勝ったから、今は金持ちだぜ?』

「優秀な傭兵さんは良いね、俺もあやかりたいよ。その武運にね」

 驚くなかれ、俺の親友グランシェの職業はズバリ雇われ兵隊。要するに傭兵という職業案内所も真っ青な職業に就いている。もしかしたら、彼の驚くべき第六感はその職業柄のせいで勝手に鍛え上げられたものなのかもしれない。

『ハッ!! 天下のオックスフォードに認められた最年少の考古学の大権威様が何をおっしゃいますやら……』
「今じゃ学会に背いた異端児扱いだけどな……」

 グランシェは茶化すように褒めてきたが、今の俺はそんな権威の欠片もない、ただの若造の研究者に過ぎない。
 実は俺が提唱し続けているドナウ河に文明が栄えていたという説は、他の学者の理論を大幅に覆させざるを得なくなるようなとんでもない説だ。
 まぁ今まで無い前提だった文明がそこにあった事になるんだし、歴史の認識も大きく変わる羽目になるのは当然なんだが。

『おっと、そんな事より俺の話を聞いてくれよ』
 と、グランシェは急に声のトーンを落として言った。

「あぁ、で? 今は何処に?」
『今はフランスのパリだ。まぁ、俺の武勇伝と共に事のいきさつを語ってやるから聞きな』

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