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葛葉

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、今度買って来てあげるね。また床が抜けたよ。ははは。ん?でも私はこの家で一生過ごすつもりだからね。まだまだ住めるよ。そうだね、壁に瑠螺蔚ちゃんくらいのでっかい穴が開いたら考えようかな。今日の用というのはね、歳の離れた瑠螺蔚ちゃんぐらいの弟が今日来るんだよ。え?んー・・・別々に暮らしているのはいろいろとワケがあってね・・・。ああそうだ珍しいお菓子を今日貰ってね。食べるかい?



隣では葛葉がもう夢の世界に旅立っている。



葉先生の声は、聞いてると心地よくて、眠くなってくる・・・。




















一番最初に会ったときに、葉先生のことをいろいろ聞いた。



後から言って嫌われるより、最初に言って嫌われた方がいいんだって。



葉先生は海をひとつ隔てた明というおっきな国から、おじいさんの頃にこっちに来たらしい。だから、和語も、あっちの方の言葉も、両方話せるんだって言っていた。



でも今はもう明の言葉は殆ど忘れちゃったなぁって言った葉先生のほっぺをあたしはぐーっと引っ張った。



「あいたたたた・・・・なんだい?瑠螺蔚ちゃん」



寂しそうな葉先生。たまにそういう顔をする。



父上がうちのお抱えの先生として、葉先生を連れてきた。



葉先生のうちは代々医家で、その腕は一級品。だけど今まで誰のお抱えにもならなかった。葉先生が、全部断ってきた。



「瑠螺蔚ちゃんのお父上の・・・忠宗(ただむね)様だけだよ。私を、私としてみてくださったのは。感謝してもしきれないよ。ここは、凄く住み心地がいい。忠宗様が治めてくださっているからかな。人も、土地も、私を受け入れてくれる」



でも瑠螺蔚ちゃんにはまだわからない話かな、って言って笑った葉先生の顔は大人の顔。



ぜんぜんわかんない。



でも父上が、あたしが思っているより凄い人なのだろうなぁ、ということはわかった。




















「・・・・瑠螺蔚ちゃん?寝ちゃったかな・・・」



葉先生に何か言われた気がしてあたしはむにゃむにゃと応える。



葉先生の匂い、落ち着ける。あたしの髪を撫でる葉先生の手が、心地いい。



「どうか、戦にだけはなりませんように・・・。この子が、泣くことがありませんように・・・・」



溜息のように紡がれた葉先生の言葉をあたしは知らない。




















それは母上の亡くなる1年前。



戦の始まる、ほんの少し前のこと。
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