アインクラッド編
その気持ちの名は――――
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返してくる。
「俺は助けてくれ、なんて頼んでないだろ・・・・・・まあ、感謝はしてたよ」
「ありがとう、の一言も無かったけどな」
「あの後コートを貸したんだから貸し借り無しだろ」
ひそひそ声でやり取りしながらアスカは思い出していた。
第1層でモンスターとの戦闘によって死ぬことだけを望んで、不眠不休で戦っていた時に隣の少女、キリトとアスカは出会ったのだ。
あの出会いが無ければ、ボス戦に参加することも無かっただろう。
きっと、いや間違いなく死んでいただろう。
自分の価値観を少しだけでも変えたのは隣で寝ているキリトだ。
「初めて会った時はどこの強盗野郎かと思ったからな」
「・・・・あれはわたしもやり過ぎだったと思ってるよ。でも、一番確実なのはあれだろ?」
「マフラーを使った変装でも大丈夫だろ」
「でもエギルには速攻バレたしなー」
「あれはキリトが間違えて『わたし』の一人称を使ったせいだろ」
断じて変装が見抜かれたのではない。
あの時の「わたし?」と、訊ねた時にエギルがめずらしく心底驚いたような顔をしていたものだ。
「クラインと話しててついうっかり・・・・・・」
「キリトの不注意のせいだろ? 他のプレイヤーにバレてないし心配しなくてもいいだろ」
「でもすでに20人以上にバレてるってのはなー・・・・」と、キリトが苦笑した。
第1層で出会った時はアスカ以外の誰にも明かしていなかったのだから、まあ無理もない。
そこで思いついたように続けてキリトがポツリと呟く。
「あの時から・・・・もう1年・・・・か・・・・・・」
その言葉には様々な思いが詰まっているような気がした。
確かに、このデスゲームが始まって1年と少し。
アスカにとっても本当に、本当に色々とあった1年だ。
「長かったな・・・・・・」
「でも、1年掛けてようやく40層か・・・・・・単純計算だと第100層まで2年半だな・・・・」
「・・・・・・・・・・」
返事が,できなかった。
それに対して自分がどのような感情を持っているのか、アスカはよく分かっていなかった。
絶望している、というのは紛れもない事実だ。
こうして仮想世界で1日過ごしている間に、現実世界の1日が壊れる。
自分と同じく良い成績を取ろうと競っていたライバル達とは大きな差が生まれているだろう。
現実世界での自分が壊れていくような感覚が嫌な冷気を纏って体をはいずり回る。
母親や、友人であった命の失望している姿を夢に見ることもある。
たとえ夢なんか見なくても、動かずにじっとしていられない衝動に駆られて3時間もすれば跳ね起きてしまう。
〈血盟騎士団〉副団長として団員達が値を上げそうになるほどのハイペースなマッピングを強いること
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