第七章 銀の降臨祭
第二話 三匹がイク!!
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リエッタ。マザリーニはアンリエッタのそんな様子を痛ましげに見下ろしていたが、一度強く目を瞑り、元の無表情に戻す。
「そうです。疑わなければなりません。他国の者だけではありません。同じ国の貴族も、家族も、友人も、恋人でさえ……全て例外なくです」
「そんな……の、そんなこと出来る、はずが……それで……は……生きて……いけま、せん」
頭を抱え、とうとう蹲ってしまったアンリエッタを、マザリーニは凍りついたように動かなくなった顔で見下ろし続ける。
「ですが、陛下の言う通り。それでは生きていくことは出来ません。なので、わたしが言ったことをその通り行う必要はありませんが、自覚はしておく必要があります。信じて騙される場合と、信じず疑い騙される場合では、その後の対応に天と地ほどの違いがありますゆえ」
「……王とは……誰一人として、本当に信じられる人がいないのですね」
蹲った姿勢で、ポツリと呟いた言葉に、マザリーニは小さく頷く。
「そうです。王とは……孤独なのです」
「……やはり……わたくしは……王になどならなければよかった」
呟くと言うよりも、漏れたと言った様子でアンリエッタは口を開く。
「その言葉は……まだ……早いと思われますぞ……陛下……」
蹲り俯くアンリエッタの前に立つマザリーニの視線は、手に持つ紙の上に向けられていた。紙に書かれているものは、人の名前だけ。
マザリーニが手に持つそれは……。
……戦死者名簿と呼ばれるものであった。
マザリーニが去り、一人だけになった執務室の中。アンリエッタは壁に背をつけた姿で、身体を抱きしめ縮こまっていた。その姿を見て、この国の女王と分かる者はいないだろう。力なく、今にも消えそうな様子を呈しているアンリエッタは、痣になるほど強く自分の身体を抱きしめながら、ポツリと押し殺した悲鳴染みた声を上げた。
「……誰か……」
アンリエッタの心には、先程までのマザリーニとの会話が思い起こされていた。
自分の感情を優先させ、将兵の気持ちを考えず命令をしそうになったこと。
親友であるはずのルイズのことを、無意識に『虚無』と道具扱いしたこと。
そして……。
「……助けて……」
信じられるものなどいない……常に疑えと言われたことを……。
黒いベールの向こうに隠された瞳から、涙が流れ出す。
頬を伝い、唇まで流れた雫は、喉を痛めながら潤し、助けを求める……。
「……………………シロウ…………」
赤い騎士に。
守ると言ってくれたあの人に……。
神聖アルビオン共和国との休戦が結ばれ、三日が過ぎたシティオブサウス
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