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剣の丘に花は咲く 
第七章 銀の降臨祭
第二話 三匹がイク!!
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局動けないのです。それならば、この機会にこちらに有利な条件で休戦を行えばいいのです」
「兵糧が足りないというのならばっ! その残りの十日でロンディウムを落とせばいいではないですかっ! そのための連合軍ではないのですかっ!? そのために『虚無』を切り札としてつけたのでしょうッ!!」 

 マザリーニは、ベールの向こうに見える表情さえ分かる程の距離にまで詰め寄られながらも、全く焦る様子も見せず、淡々と興奮するアンリエッタを諌めた。

「早期に決着をつけたいのはわたしも同じですが、無理な進軍は、必ず何処かにしわ寄せが来ます。なに、風向きは完全にこちらに向いています。今さら降臨祭の間休戦したからと言って、連合軍が負けるようなことはありません」
「っ……その、通りですね。すみません。口が過ぎました……休戦を許可します。休戦条件は草案を早急に上げてください」

 常に冷静な姿勢を崩さないマザリーニの姿に、やっと我に返ったアンリエッタは、唇を噛み締めながらマザリーニから離れる。我に返り、休戦を許可したアンリエッタの姿を見たマザリーニの顔に小さな笑みが浮かぶ。アンリエッタは、無表情だったマザリーニの顔に微かに笑みが浮かぶのを見て、何気なく頭に浮かんだ言葉を口にした。
 してしまった。

「枢機卿は、皆のことを信用されているのですね」

 その結果。
 アンリエッタは後悔することになる。

「……いえ、わたしは誰も信じてはおりませんぞ」
「え?」

 アンリエッタが、不思議そうな声をあげた。

「いいですか陛下。そもそも国と国との交渉だけでなく、全ての場で、我らは相手のことを信じてはならないのです」
「それは、どういう……」
「言葉通りの意味です」

 淡々と話すマザリーニの様子に言いようのない不気味さと不安を抱いた、アンリエッタは怯えるように後ずさる。

「国を動かす立場にいる者には、とても重い……重い責任があります。時には一つの言葉で万の人を殺すこともありますし、一つの指示で、国を割ることもあります……最悪、国を滅ぼすこともあります」
「国を……」
「わたしたちには、そうした力があるのです。それが政治家というものであり……そして、その力が最もある存在が……王である……あなたなのです」
「ッ!?」

 一歩ずつ後ずさっていたアンリエッタの足が、行き止まりでもないにも関わらずピタリと止まる。
 黒いベールの向こうにある顔が、真っ青に染まっていた。

「ほろ……ぼす? わ、た……くし……が?」
「だからこそ、我らは常に疑わなければなりません。騙され、利用されれば、犠牲になるのは我らだけでなく、国全体に及ぶのですから」
「つね、に、うた……がう……」

 俯き、震えながら、自分自身の身体を抱きしめるアン
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