暁 〜小説投稿サイト〜
剣の丘に花は咲く 
第七章 銀の降臨祭
第二話 三匹がイク!!
[14/19]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
視線が痛い。
 なのでガッチリと腰に回された手を外すことを早々に諦めた士郎は、これを何とか出来るだろう人物に助けを求めた。

「助けてくれませんかスカロン店長」

 首を傾かせた士郎の視線の先には、革の衣装に身を包んだオカマ店長の姿があった。スカロンは士郎の助けを求める声と目に「ん〜」と野太い声で唸りながら顎に指を当てると、その分厚い唇の端を曲げ、

「このままあたしも混ざっちゃおうかしら?」
「それだけはやめてくれえええええええええええ!!??」

 ニヤリと笑うスカロンに、遂に士郎は悲鳴を上げた。














「それで、どうしてここにいるんだ?」
「え? ああ、それはですね。わたし達はここに慰問に来たんですよ」

 何とかシエスタ達を引っぺがすことに成功した士郎は、興奮状態の彼女達を落ち着かせようと、広場に面したカフェに連れ込んだ。カフェの定員に飲み物を人数分頼み椅子に座ると、シエスタとジェシカは椅子を士郎に近づけだす。士郎が止める間もなく、近づけた椅子に座った二人は、身体を士郎にしなだれかかる。説得をするも聞くはずもなく、店の中にいる客からの視線に刺さるのを感じながら、士郎は店員が来るまでの間、乾いた笑みを口に浮かべていた。暫らくした後、店員が持ってきた飲み物を飲む時でさえ、二人は士郎から離れることなく、ベッタリとくっつきながら飲む始末だ。
 士郎は二人を離すの諦めると、左右から抱きつき、胸に顔を埋めるシエスタにここにいる理由を聞くと、シエスタは幸せそうに微笑みながらそれに答えたのだった。

「慰問? いや、それはまあ、見ればわかるんだが、シエスタは魔法学院のメイドのはずだろ。それがどうしてここに?」

 シエスタの答えに、士郎は特に驚きを示さなかった。最近そのことについて良く耳にしていたからだ。アルビオンでは、トリステインとは違い、ワインをあまり飲まないせいから、出る飲み物はお茶か麦酒しかない。それだけでなく、食事の方もまた、トリステインと大分違うことから、近々慰問隊が来るとは、最近良く耳にしていたからだ。しかし、その時の士郎には、その慰問隊の中に、『魅惑の妖精亭』が入っていたなど夢にも思わなかった。
 とは言え、今の士郎にとって疑問なのはそこではなく、『魅惑の妖精亭』の店員でも何でもないシエスタが、何故こんなところにいるのかということだ。戦時中とはいえ、魔法学院には女子生徒たちが残っているため、授業がまだ続いている筈なのだが。

「そ、それは……」

 幸せそうに顔を緩ませていたシエスタが、急に苦しげに眉を寄せる。その姿に胸騒ぎを感じた士郎は、シエスタの肩に手を置くと、ゆっくりとした口調で話しかけた。

「何があった」
「……学院が襲われました」

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ