暁 〜小説投稿サイト〜
剣の丘に花は咲く 
第七章 銀の降臨祭
第二話 三匹がイク!!
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気付くことなく、他に何かあるかと周りを見渡していた士郎の足元に、小さな影が駆け寄ってきた。

「兄ちゃんっ遊ぼうっ!!」
「外で露天が開いてたよ! 一緒に行こうよっ!」
「あそぼあそぼ」
「きゃっ!? あ、あなたたちっ?!」

 真っ赤な顔で、しかし笑みを浮かべながら頭を撫でられていた少女は、ドアから飛び込んできた影の声に驚き、ぴょんっと士郎から飛び離れてしまう。その隙に小さな影たちは、少女と士郎の間に入る。
 士郎の足に縋り付いて催促するのは、この家の子供たちであった。
 まだ十歳に満たないだろう。士郎の足を中心に、ぐるぐる回っている。士郎は足を曲げ視線を子供に合わせると、両手を使い、それぞれの頭を撫で始める。子供たちは、士郎に頭を撫でられると、電池の切れた玩具のようにピタリと足を止め、気持ちよさそうに顔を緩めた。もっとと言うように、士郎の胸に縋り付いてきた子供たちの姿に、その姉である、先程まで士郎に頭を撫でられていた少女が、頬を膨らませながら声を上げる。

「何やってるのっ!! シロウさんの邪魔になるでしょっ!! さっさと出て行きなさいっ!!」
「うわっ! な、何言ってんだよ姉ちゃんっ! 姉ちゃんだってさっきまでシロ兄に頭を撫でられて喜んでたじゃないか!?」
「そうそう」
「もっと……撫でて」
「な、ななななななに、何言ってるのよっ!?」

 一気に騒がしくなる様子に、士郎は苦笑いを浮かべると、足を伸ばし、再度ぐるりと部屋の中を見渡す。風が吹き込んでこないことと、瓦礫の姿がないことを確認すると、椅子に掛けていた外套を手に取り身に付けた。

「兄弟喧嘩も程々にな。それではな」
「あっ! ちょ、ちょっと待って下さい!!」
「ん? 何だ?」

 ドアノブに手を掛けた姿で後ろを振り向いた士郎の前で、亜麻色の髪の少女が、もじもじと身体を揺らしている。

「その、な、何かお礼を……」
「いや、構わない」
「そんなっ! ここまでして頂いたのにそんなのはっ!」

 ダメですと首を振る少女の姿に、ふっと口元を綻ばせた士郎は、ドアノブから手を離すと、少女の前まで歩いていく。少女の前で足を止めた士郎は、亜麻色の綺麗な髪の上に手を置くと、ゆっくりと、手で髪を梳くように撫ではじめる。

「くぁ……あ……っ……ん……」

 一瞬で顔を真っ赤に染めた少女が、何かに耐えるように唇をキュッと噛み締める。
 その姿を士郎は恥ずかしがっていると勘違いし、パッと手を離すと、少女は「あっ……」と物欲しげな目で士郎の手を追ったが、やはりそれも士郎は気付くことはなかった。お預けを食らった犬のような目で士郎を見上げてくる少女の目に士郎は視線を合わせると、優しく、それでいて少し悪戯っぽい顔で笑った。

「さっきの言葉だけで十分だ。特
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