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剣の丘に花は咲く 
第七章 銀の降臨祭
第二話 三匹がイク!!
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並べてあったワインの一つを手に取ると、ルイズは瓶の蓋を開け、小さく息を吐き……。

「ちょ、ちょッ!?」

 止める間もなく一気に呷った。
 デルフリンガーの目の前で、どんどんとなくなるワインに比例するかのように、ルイズの顔が赤く染まる。
 「ぷはっ」とルイズが瓶から口を離した時には、既に瓶の中には、ワインの姿がほとんど見えなかった。
 少しふらつきながらも、デルフリンガー……いや、床に並べられた衣装の前にまで戻ったルイズは、ゴトリと瓶を床に落とすと、空いた手をゆっくりとした仕草で床に向かわせる。

「ふ、ふふふ……こ、これを着ればシロウが……あはっ……アハハハ……」

 胸に黒猫変身セットを抱えたルイズが、真っ赤に染まった顔で笑い声を上げる。暖炉で燃える火に照らされたルイズの影が、歪な形となって壁を染めた。何処かネジが緩んだ様子で哄笑するルイズの様子に、デルフリンガーが恐々とした声で呟く。

「こ、こりゃ俺っちは……とんでもないものを起こしちまったかもしれねえな……すまん相棒……無力な俺を許してくれ……」

 士郎が聞けばお前のせいだろうがッ!! と怒鳴りつけられそうなことを呟くデルフリンガーの前で、ルイズが変身セットを抱えると、部屋に設置されている小部屋に向かっていった。

「まあ、こういうのも節操なく女に手を出した相棒が悪いんだし……自業自得と言うことで……俺知〜らねっ!」

 デルフリンガーの無理矢理上げた明るい声が、薪が爆ぜる音に混じって部屋の中に響き渡った。














 ルイズとデルフリンガーが宿屋の一室で会議を行っていた頃。士郎はと言えば、一人宿を離れ街の中にいた。連合軍は極力市街地への攻撃は避けていたが、それでも街に被害が全くないというわけではない。街中に潜伏していた亜人との戦い等で、街のあちこちにまだ、痛々しい傷跡が残っている。そんな一角の壁が崩れた一軒の家の中、士郎は汗を流しながら瓦礫を運んでいた。

「っよし。これで最後だな」
「あ、ありがとうございます。本当にすみません。こんなことまでしていただいて」
「いや。構わないよ。こんな寒空で壁が壊れていたら大変だからな」

 士郎の前で申し訳なさそうに頭を下げるのは、長い亜麻色の髪を持つ少女だ。髪の隙間から見える顔立ちは、息を飲むと言うほどではないが、ずっと見ていたいような安心感を抱かせる容姿の、可愛らいしい少女だった。
 頭を下げる少女の手を取り顔を上げさせた士郎は、ルイズとそう歳の変わらないだろう年頃の少女の頭に手をやると、優しく撫で始める。

「一応壁は塞いだが。応急処置だからな、落ち着いたらすぐに直したほうがいい」
「あ……は、い……」

 真っ赤に染まった顔を俯かせる少女の
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