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椿姫
第一幕その二
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彼女達の目の前では着飾った紳士や淑女達が華やかな宴に興じていた。誰も監督に声をかけようとはしなかった。
「わかっていても出来はしないことがあるのよ」
「そんなものが」
「あるのよ。それもすぐにわかると思うわ」
 力のない言葉をまた口に出した。
「それでもいいのよ、やっぱりね」
「そうなの」
「ええ。けれど気持ちだけは受け取っておくわ」
「有り難う。あら」
 フローラは後ろのカーテンが動いたを認めた。
「ヴィオレッタ」
「何かしら」
 そして今度は別の切り口でという形になっていた。
「男爵が戻って来られたわ」
「あら」
「ええと」
 フローラはヴィオレッタに先立ってその客人に目をやっていた。そして細かく分析を開始したのであった。
 背は高くスラリとしている。顔は気品があり全体的に若い。二十代前半といったところか。顔には若さが漂っていた。
 服はタキシードであった。その生地の下地を見ればそれだけでもうかなりのものであった。それをそつなく着こなしている。まるで普段着の様にその服を着ていた。
「立派そうな方ね」
「そうなの」
「歳は・・・・・・貴女より下だと思うわ」
「私よりも」
「それでもいいかしら」
「そうね」
 ヴィオレッタは思案しながら言葉を返した。
「私は別に構わないわ」
 様子を見る為にそう返したのであった。そうこうしている間に男爵とその青年がやって来た。
「只今戻りました」
「はい」
 ヴィオレッタは男爵にそう返した。
「彼がその青年です」
「はじめまして」
 その若者はヴィオレッタに挨拶をした。
「アルフレード=ジェルモンと呼ばれます。以後お見知りおきを」
「はい」
 ヴィオレッタはそれに頷いた。
「私は」
「ヴィオレッタ=ヴァレリーさんですね」
「え、ええ」
 名乗るより前に自分の名を言われいささか戸惑いを覚えた。
「この屋敷の主でございます」
「この若者は非常に心優しい青年でして」
 ガストーネが前に出て来た。そしてヴィオレッタに対してアルフレードをそう紹介する。

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