第二十四話 少年期F
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ともできない」
もうほとんど独白のようになってしまった言葉たち。リニスにとって、わけのわからない話ばかりだろう。それでも彼女は何も語らず、じっと俺の目を見据えてくれている。リニスのそんなところが俺にはありがたかった。
俺は再度お守りを掲げる。彼女―――フェイト・テスタロッサ。ずっと昔は、ただの物語の登場人物だった。そのあとは、俺が存在を消してしまう、罪滅ぼしをするべき少女だった。だけど今は、俺にとって彼女は……恩人になっていた。
罪悪感から動いていた気持ちは、彼女への恩返しへと変わった。それは言葉遊びをしているだけかもしれないけど、これ以上ないほどに俺を勇気づけてくれた。勝手な解釈だとしても、そのおかげで俺は物語だけでなく、彼女たちとも真正面から向き合えるようになれたんだ。
だけど、俺が彼女に直接恩返しをすることはできない。彼女の家族を―――プレシアとアリシアが幸せになることもフェイトさんの願いだったけれど、これはもともと俺が決めていたことだ。それにフェイトさんのことは関係ない。
ならば俺にできることは、彼女の大切な友人や人たちを救うことだと思った。目標は最初と同じでも、目的は180度変われたのだ。それでも先ほどリニスに話していた通り、その人たちみんなを両手で救うことはできない。
だから、そんな俺はあらためてここで決心しようと思う。フェイトさんを愛していたリニスさんとは違うけれど、それでもほんの少しでも彼女と関係のある誰かに伝えたかった。
「俺の両手ではあなたの大切な人たちを救うことはできません。……それならせめて、あなたの大切な人たちを最悪から蹴っ飛ばすぐらいの気概はみせてみせます」
両手がふさがっていても、両足なら空いている。それならとにかく、最悪から放り出してしまえばいいのだ。俺程度でも、そのぐらいならできるかもしれない。
……あーでも、コントロールには目をつぶって欲しいかな。両手がふさがっているから、マジでどこに飛んでいくかもわからないし。しかも蹴り飛ばすから全然優しくなくて、相手に怒られるかもしれないけど…。それでも頑張ってみせますから。
「にゃー」
「あっ、えっと、悪いなリニス。なんかわけわからんことにつき合わせちゃって」
俺はお守りを石の入っていた箱の中に片づけておく。先ほどまで話していた内容を振り返りながら、自身の頭を掻く。いくらなんでも勝手だったよな…、と自分に呆れてしまう。そんな俺の様子を無言で見つめてくるリニス。そして彼女は腰をあげ、俺のすぐ傍へと近づいてきた。
「……ふぅ」
「え、ちょッ」
そしてリニスは、俺の膝の上に飛び乗ってきた。……もう一度言わせてもらう。リニスが自分から俺の膝の上に乗ってきた。……自分から! 俺の!
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