暁 〜小説投稿サイト〜
少女1人>リリカルマジカル
第二十四話 少年期F
[1/9]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話


 今更かもしれないが、俺は転生というなんとも摩訶不思議な体験を現在進行形で経験している。2度目の人生。そんなの漫画や小説、あるいは宗教とかぐらいでしか、普通耳にすることはないものだろう。

 それでもこうして世界は違えど、俺は俺として再び生きることを許された。それってかなりすごいことだと今でも思う。さらにこの世界の未来についての知識も持っている。ほかの人とは違う『特別』を、俺は間違いなく持っていた。

 だからこそ、俺には救える人がいた。必死に手を伸ばして、俺が使えるものを全部使って。それこそ、知識も人脈も能力もなんでもだ。一緒にこれからもいたい、という俺自身の願いのために俺は『特別』を使った。


 絶望の中に狂うはずだった母は、優しく木漏れ日のようなあたたかい母親のままに。生きたかったと涙を流しながらも、それでも妹の背中を押してあげた少女は、未来に向かって自分の足で歩いている。

 今の未来が、俺自身の手で起こしたことなのだと否定はしない。事実俺が動かなければ、何も変わらなかった可能性の方が高かっただろう。だからこそ、俺は持っていたものを使う選択肢を選んだ。俺自身も必死に頭をひねって、成功だけを目指して突き進んだ。救える可能性が俺にあるのなら……、とただ頑張るしかなかった。

 それは、それぐらい我武者羅に前を向き続けなければ、自分を奮い立たせなければならないほどに、俺自身は前世と何も変わらなかったからだ。


 ……俺は、本当にただの一般人だったんだ。命のやり取りもそれこそ殴り合いだってしたことがない。むしろ血を見たらビビるね。悲惨な過去とかも全然ないし。

 だから『特別』を持ったからって、俺自身の考え方やあり方は変わらなかった。基本的に俺は人の上に立てる性格ではないし、博愛主義者でもない。自分が傷つくのは嫌で、他人に嫌われるのも怖いと思っている。

 とてもではないが、ヒーローになれる要素なんてなかった。だからヒーローもどきになら、と自分に言い聞かせて走るしかなかった。アリシア達を助けると決めていたのに、ずっとその先の影響を考えることを拒否していたのもそれだ。当時は理不尽だと何度も叫んでいただけだった。

 だって下手したら世界を滅ぼしかねないものを、俺1人で解決できるなんて思えるわけがないじゃないか。『特別』を持っていたって、誰かの命がかかっていたって、自分がきっかけを作ったのだとしたって……そんなものを背負いたいなんて思わないだろ。薄情だろうとそれが、俺の紛れもない本心だったんだ。



 ……とまぁ、こんな風に鬱々と考えていたのが去年の今ぐらいだったんだよな。なんだかもう頭が痛くなって、似非悟りモード一歩手前なぐらい悩んでいたと思う。今はなんか吹っ切れたというか、もうごちゃごちゃ考えても
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ